研究紀要第73号「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -123/126page

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5. 考察とまとめ

(1) 非社会的行動に対する対応の現状について
 調査全般を通して言えることは,非社会的行動の改善に向けての教師の取り組みは極めて積極的であるということである。
 しかし,具体的な指導援助において,例えば,ラポールの形成を十分にしないまま指導援助しているとか,収集した資料を生かしきれないまま指導援助しているというように,指導援助にとって要点とされる事項のねらいとするものが十分達成されないまま進められているように思われる。
 このことは,各事項を十分達成するためのより具体的な方法や手順が理解されていないことに起因するのではないかと考えられる。

(2) 指導援助の手引について
 先の,非社会的行動に対する対応の現状でも明らかなように,的確な指導援助を進めるためにはその指針ともなる手引の必要性を認識した。
 そこで,前述の手引は,指導援助にとって要点とされる各事項が具体的にどのような順序性と内容をもって指導援助を展開して行けば,それぞれの事項が達成されるかを追求し,例示したものである。一人でも多くの先生方に活用していただけることを期待している。
 なお,この手引は完全に構築されたものではなく,今後より一層の改善と工夫が必要とされる。

(3) 事例について
 各事例は,第1年次研究において帰納的に追究した「非社会的行動をもつ児童生徒への教育相談の進め方」として必要な 11 の事項をもとに指導援助を行ったものである。
 しかし,まとめ方としては各事例全般を通して各事項の具体的対応が理解されるよう重点的にまとめた。
 事例を通して検証されたことは,先の指導援助にとって要点とされる 11 の事項は問題の解決に有効であったということである。
 また,指導援助のため作成した手引は,具体的なかかわりを深めるために役立ち,今後大いに活用できることが確認された。
 なお,問題の改善や解決につながっているのは指導援助の手順や技法だけではなく,直接児童生徒にかかわりをもつ指導援助者の人間性や,たゆまぬ研さんと努力の結果でもある。

 最後に,本研究にご協力下さいました研究協力校及び協力員,更には調査等にご協力下さいました先生方に深甚なる謝意を表します。
 なお,本研究の特質から協力校並びに協力員の先生方の名を明記できない事情をご理解いただきたい。

6. 総  括

 本研究と61年度研究をもって「非社会的行動をもつ児童生徒への心理的な指導援助」の研究は一応の完結をみたことになる。
 問題行動の解決には,教育相談の手順によって進められるのは当然であるが,それ以前に指導援助者の人間性が問題解決に寄与することば極めて大きい。
 このように,指導援助者の人間性に根ざした教育相談は今こそ求められるものである。
 教育相談の終局のねらいは,児童生徒が環境により適応し,自立していくことを援助していくことであり,教育相談に当たる指導援助者は児童生徒に与えるべき価値や内容を自らの内に持たなければならないと考える。
 したがって,指導援助者自身も適切な指導援助に向けての自己研さんが必要となってくるのである。


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