研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -089/137page
む す ぴ
現在,学校教育の改革が世に問われ,新しい方 向が模索されている。このような状況のもとで 「基礎・基本」や「個性の伸長」についてさまざ まな提言がなされている。本研究では「基礎・基 本の定着と個性の伸長」を主題に第2年次を迎え 理論研究に基づいて,全体坂説,次に,それを受 けて教科仮説を設定し,実践研究を通して主題を 追究した。
実践研究では児童生徒一人一人の可能性を伸ばす学習指導を推進していくことを目標に,基礎的・基本的な内容の定着を図る過程において児童生徒一人一人の個性(「よさ」)に徹底してかかわる授業の展開に心掛けた。すなわち,児童生徒の「よさ」が発揮できるようにするため教材などを生徒の選択にまかせたり,児童生徒一人一人が自分の持ち味を十分に発揮でき,自分の考えをその子らしい方法で表現し,しかもそれが級友や教師から受け入れられていると感じることができるように配慮したのである。それは,一人一人の「よさ」を生かし伸ばす過程においては,児童生徒が安心して,納得して,充実感を得られるような学習の場を設けてやることが大切であると考えたからである。
このことにより,児童生徒一人一人が学ぶことに喜びを見いだせたばかりでなく,「グループ」ひいては,「学級」全体が,たがいにいっそう協力しあう自由な雰囲気に満ちてきたのである。
しかしながら,一人の個性(「よさ」)も集団の中では埋没してしまうケースがないわけではない。そこに,集団を基盤とした個性の伸長の難しさが感じられる。
いずれにせよ,「基礎・基本の定着と個性の伸長」を目指す学習指導は,行きつくところ,児童生徒どうし,児童生徒と教師の触れ合いの大切さ,つまり,お互いの信頼関係にあることを肝に銘じなければならないと考えている。
今後は,そのことを考慮にいれながら,本年度の実践研究を適して浮き彫りにされた下記の問題点を課題として追究していくことにする。
○「基礎的・基本的な内容を定着させ,『よさ』 を生かす」ための手だてをさらに具体化し,その 手だてが,適切に作用しているかどうかを確かめ る方法についていっそう工夫する必要がある。
当研究の推進にあたりご協力いただいた協力校の先生方に感謝申し上げるとともに,この実践研究について,各位のご意見,ご助言を賜りますようにお願いいたします。
< 参考文献 >
- 個人差に応じる学習指導事例集 (文部省)
- 個別化教育入門:加藤幸次著 (教育開発研究所)
- 個別化教育の進め方:全国教育研究所連盟編 (小学館)
- 真の個性教育とは:梶田叡一著 (国土社)
- 個怯を生かす学ばせ方:辰野千寿著 (図書文化)
- 理解,表現,言語辞典 (全教図)
- 一人ひとりに応じる授業の方法と技術:福岡県教育研究所連盟編 (第一法規)
- 社会科指導の実際:古川清行編著 (東洋館)
- 社会科基本的内容と教材化:溝上 泰編 (明治図書)
- よさを味わう授業の創造:佐藤俊太郎編著 (明治図書)
- 集団づくりと授業過程:現代中等教育研究会編 (明治図書)
< 研究協力校及び協力委員 >
○ 福島市立福島第二小学校
渡 部 節 佐 藤 吉 郎
○ 伊達郡川俣町立川俣南小学校
本 多 淳一郎 橋 本 利 浩 酒 井 智 子
○ 福島市立吾妻中学校
柳 谷 幸 雄 半 杭 千 歩
< 研究プロジェクトメンバー >
- 高 橋 俊 彰
- 五十嵐 康 雄
- 菅 野 暁
- 関 博 之
- 渡 辺 博 志
- 西 牧 裕 司
- 田 中 靖 則
- 林 宗一郎
- 水 野 信
- 田 中 四 郎
- 松 浦 芳 孝
- 深 澤 陽 一
- 村 上 幸 男
- 吉 田 政 勝
- 吉 田 尚