研究紀要第75号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -088/137page

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れ,基礎的・基本的な内容も定着するものと考え る。

5.まとめ

 課題解決の過程において,一人一人の「よさ」を生かし,基礎的・基本的な内容の定着を図るために,小集団学習を取り入れた授業の在り方について追究してきた。また,その学習の展開の中で自己評価及び相互評価の効果的な活用について工夫してきた。小集団学習によって学習への意欲が高まり,見通しを持ち,自分なりに解決しようとする態度が身についたことは,受動的な学習から能動的な学習へと少なからず変容したものと考える。

 更に,自己評価・相互評価を取り入れたことは,お互いに学習意欲を啓発することに効果的であったと考える。このような個と集団のかかわる授業を試みることによって,基礎的・基本的な内容が定着し一人一人の「よさ」も生かされたものと考える。

 今後,このような実践をするにあたっては,次のようなことにいっそう配慮することが大切である。

《1》 一人一人が十分考えられるゆとりある授業に するために,「よさ」を生かす観点から指導計 画の改善を図る。

《2》 自己の変容をとらえ学習意欲を高めるために, 自己評価の活用と相互評価のさせ方を工夫する。

《3》 「よさ」を生かすために,生徒の実態と教材 の内容から個と集団のかかわりの場をどこで, どのように設定するかを工夫する。

【授業者の感想】

福島市立吾妻中学校教諭  半杭 千歩

 教職の道を歩み始めて日も浅い昨年,脇力員としてこの研究に参加する機会を与えられた。当時は,自分にとってすべてがはじめての出会いであり,学習指導,生徒指導に全力を注ぎ込む日々であった。

 この研究に参加させていただき,研究主題を知った時,これは,教師としての自分に課された大きなテーマでもあると思い,期待感と共にいささかの不安もあった。先輩の先生方からの教えと励ましをいただき,教育センターの先生方との話し合いの中で研究内容が具体化されていくにしたがい,ますます研究の意義深さを感じた。これまでにも,折にふれ小集団学習を授業に取り入れてきたが,ややもすると助け合い学習に傾いてしまうこともあり,この機会に小集団学習を実のあるものにすべく指導法の工夫に努めてきた。

 生徒たちのそれぞれの持ち味をどの場面で発揮させるか,それは生徒をよく理解することに始まり,教材の吟味から提示の仕方にいたるまで,すべてに渡って検討を要することと実感した。日頃おとなしく消極的だと思われていた生徒が,生き生きと活動している場面をはじめて見た時,小集団が生徒の自己主張できる身近な場であり,これを大切にしなければならないものと,あらためて考えさせられた。

 授業中,生徒は「なぜなんだろう」「どうしてなんだろう」とさまざまな疑問を脳裏にかけめぐらせながらも,分かろうとする一心から熱心に話を聞いている。「よく活動できたね」と賞賛すると,「自分の考えを,みんなに聞いてもらえてよかった」「みんなが認めてくれた時うれしかった」といった感想が返ってくる。このようなすばらしい声を聞くためには,生徒が安心して自分を表出できる環境や条件が必要であり,それには日々の教材研究と共に,ふだんの生活の中で生徒一人一人をしっかりと見つめていかなければならないことをこの研究を通して体得できた。このことは,私にとって大きな収穫であった。


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