研究紀要第76号 「情報活用能力の育成に関する研究 第1年次」 -099/137page
「情報活用能力が身についている子ども」とは どのような状態にあるのかを明確にすること である。
この状態が明確にされれば,研究実践の方向づけや効果的な指導の手だてが講じやすくなる。
本研究では,まず,「情報活用能力が育成された状態像」についての理論研究を進めてきた。
情報そのものについての定義づけも様々であ り,広範な情報の中に生活している子どもの 「情報活用能力が育成された状態」をどうとら えるかは非常に困難であった。文献研究とその 検討の結果,完全なものとは言えないが,これ をP.100の図のようにまとめた。
下位目標《1》〜《12》の達成状況を調べるにあたっ て,上位目標の一つである情報モラルの育成な どについては,能力そのものの中に児童・生徒 の情意的な面が多く含まれているため,これを 数量的に評価することが困難であるなどの問題 があった。
このため,文献研究や研究討議を重ねると共に各目標の要素を分析して分かりやすい表現を工夫し,客観的で信頼性のある評価ができるように配慮することが,不可欠のこととなった。
この下位目標《1》〜《12》の達成状況を更に明確に するために,達成された状態を5段階に規定し た。5の段階を最も望ましい状態として,以下 順に4・3・2・1と決めた。
これらの各項目については,学校教育活動を通して育成できるものに焦点をあて,指導過程においては,指導の効果を適切に評価できるものであることとした。
これらの各項目については,学校教育活動を通して育成できるものに焦点をあて,指導過程においては,指導の効果を適切に評価できるものであることとした。
まず,これらの評価方法の一つは,教師が児 童・生徒の情報活用能力が育成された状態を観 察によって評価する方法である。その際,教師 が観察によって評価する尺度として用いるため に,これを【評定尺度T】とした。
次に,【評定尺度 I 】による教師側からの観 察評価だけでなく,児童・生徒の情意面(意識) の変容の状態を調べるために,この評定尺度 I の各項目に対して,質問紙法による評定尺度U (自己評価表)を作成した。
評定尺度 II は,児童・生徒の発達段階に応じ て,児童・生徒に質問の意味が十分理解できる ように文言の表現には特に細かい工夫を加えて 作成した。
また,自己評価表は発達段階を考え,小学校・中学校・高等学校用とそれぞれに準備し,子どもの立場からみて十分な自己評価ができるように配慮して作成した。
今年度は,研究協力校の協力を得て検証授業 を試行してみたが,事前・事後調査の比較から その変容が十分評価できることを確認したので, 第2年次は,更に多くの研究協力校の研究協力 を得て,当教育センターの情報活用能力育成プ ロセスにより実践を依頼し,本研究を継続する 予定である。
このような研究実践の過程で【評定尺度 I 】 【評定尺度 II 】を用いることによって児童・生 徒一人ひとりについて,事前・事後の教師の観察 評価や生徒の自己評価の変容を比較したり,教 師と児童・生徒との意識の変化を調べたりしな がら,一人ひとりに即した適切な「指導の手だて」 を探って行くことができるものと思われる。
また,コンピュータによるデータの処理等についても研究を重ね,現場の指導参考資料として,有効なものをまとめて行きたいと考えている。