研究紀要第76号 「情報活用能力の育成に関する研究 第1年次」 -102/137page
III 検 証 授 業 の 実 践
1.実践計画の概要
情報活用能力が育成された状態像の具現に向け て中学校特別活動の領域における学級指導(第2 学年)で具体的に実践することにした。実践の手 順としては,まず事前調査(後述)の実施結果を 分析し,特に低くとどまっている要素に視点をあ て,それらを向上させるための手だてを考慮しな がら進めることとした。
(1)評定尺度 II による事前調査の結果と考察
《1》調査結果からみた学級の傾向について
研究対象学級(福島市内の中学2年生)の評定 尺度U(P・101中学校自己評価表)による調査結 果(下図左参照)では,全体的傾向としては女子 の方が男子よりも若干低い値であるが,問題とな るような差異は認められず,ほぼ似たような傾向 を示している。特に低い要素(△印)としては, 新たな情報の創造《4》,情報科学の基礎理解《10》,情 報機器の具体的な繰作《12》の三点が認められた。そ の中で要素《12》は最も低い値を示している。基礎調 査の全体的傾向(P.97)からも分かる通り,パ ーソナルコンピュータの使用経験のない生徒が大半を 占めている実態や学校での設置台数が現在2台のみで あるという状況を考えれば,生徒たちが使用できる機会 が極めて少ないことは当然考えられる。特に女子 は5段階評定で1を選択した生徒が71%を占めていた。
同様に要素《4》及び《10》においても,情報そのもの に対する基礎的な知識を身につける機会が現状で はまだまだ少ないことが考えられよう。
これら低くなっている要素は,今後情報活用能 力を育成していくための核となる重要なものと考 えられるので特に留意しておきたい。その中でも 要素《12》は,生徒が直接体験することが最も効果的 であり,体験学習を通して身につけるべきものな ので,この要素を中心にして,他の要素との 有機的な関連づけを図りながら,情報活用の能力 を高めていきたいと考える。
《2》研究対数生徒の抽出について
ここでは,事前調査の評定結果及びそれまでの 総合的な学習の状況から,上位,中位,下位の3 群に分類し,その中から特徴的な生徒を2名ずつ 抽出して観察を試みることにした。なお,図−7には 上位A男,中位C男,下位F子の3名の生徒の自 己評価表を示した。
(上位)A男 全体43 平均3.6 (中位)C男 全体35 平均2.9 (下位)F子 全体22 平均1.8 図-7 抽出生徒の評定尺度(自己評価表)の結果