研究紀要第76号 「情報活用能力の育成に関する研究 第1年次」 -108/137page
これらのことを更にくわしく調べるため, 生徒を自己評価の結果から上位,中位,下位の 3グループに分けて分析したのが図−10の右に 示すものである。
上位の生徒と比較して,中位や下位の生徒の事後の伸びが大きいことが,より明確に表れている。
●グループの変容 事前 事後 変容 上位の平均 3.49→ 3.65 +0.16 中位 〃 2.88→ 3.18 +0.30 下位 〃 2.20→ 2.59 +0.39 (図−10より) 《2》 クラス全体を見ても情報手段の理解と操作能力の習得に関連する「情報科学の基礎の理解《10》」 「情報手段の特徴の理解《11》」「情報手段の基本的な操作能力《12》」の要素の伸びが大きい。
調査(評定尺度II)
わずかな時間ではあるが,事前に,CAI教 材を利用して,コンピュータ操作の練習をした ことは,本時の成果をあげるためにかなり有効 であったと思われる。
また,本時の授業で必要な情報をコンピュー 夕から自由に引き出せることを知った生徒は, 大変な驚きを見せていたが,自分で情報を引き 出すという経験はコンピュータの特徴の理解に つながり,更に,ほとんどの生徒が,現在の情 報科学の基礎を実感としてとらえたものと考え られる。
●学級平均の変容 事前 事後 変容 操作能力の習慣《12》 1.65→ 2.70 +1.05 情報科学の基礎理解《10》 2.45→ 3.00 +0.55 情報手段の特徴把握《11》 2.75→ 3.10 +0.35 情報選択の能力《2》 2.26→ 2.90 +0.25 情報収集の能力《1》 2.80→ 3.00 +0.20 (図−11より) 《3》 情報化社会の認識に関連する「情報化社会の 認識《6》」「情報化の進展の影響の理解《7》」「情 報の重要性《8》」は事前テストの段階から,他の 要素よりは比較的高い値を示した。このことか ら,中学2年生ではあるが,生徒たちは高度情 報社会が進んでいることをマスコミやさまざま なメデアを通し,実際の家庭生活や社会生活に おいて体験しているものと考えられる。
《4》 授業全体を通して 生徒たちの反応は コンピュータの操作 について見れば,授 業での活動,授業後 の感想文,自己評価 の評定値の変容など から判断して,きわ めて好感をもったよ うである。やや時間 オーバーぎみの授業 であったにもかかわ らず,もっと時間を かけてやって欲しい という声が圧倒的で あった。
研究の視点で述べた通り,「情報手段の基本 的操作能力《12》」を向上させることにより,他の 情報処理や創造力を高めようとしたが,本時の 授業を行ったことにより,学級平均での各要素 はもとより(図−11参照),全体の要素の平均 でも事前から事後にかけて,2.85→3.12と0.27 の向上が見られた。これらのことから考えて, 成果は大なるものがあったといえよう。