研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -121/137page

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事例2

「家出」が予測される中学生への予防的な指導援助の事例

1.予測した問題行動    家出

2.対象     中学校2年 男子(B男)

3.問題行動予測の動機

・ 授業中,教科書も出さず,外を見ている。 
・ 4月にクラスで実施したYG性格検査でB型。 衝動的,社会的外向,劣等感で高い数値を示す。
・ 母親から,以前「夜間徘徊」をした同級生と 付き合っているため帰宅時間を守らず,B男への 対応に困っているという電話が入る。

4.資料

 前担任からの引き継ぎに際し,心配していたこともあり,家族関係や本人の問題点を中心に既存の資料や他の教師から収集した。また本人に心理検査などを実施した。

(1)既存の資料より

○ 各教科の評定

・小6 体育4,他は3(指導要録抄本) 
・中1 体育4,他は2(指導要録)

(2)他の教師からの情報

《1》 前担任から

○ 両親は共働き。2歳の時から保育所にB男を 預けた。家庭の雰囲気に温かさが感じられない。

○ 父親は45歳,会社役員。社交家で世間体を気 にする。幼少期からB男との遊びは少ない。思い つくと勉強や友達関係のことでB男を厳しくしか る。姉の「家出」事件があってから一段と厳しく なる。B男もまた父親を嫌っている。

○ 母親は40歳,会社員。何かあるとこまごまと 注意するので,B男は母親と話すのを嫌がる。B 男に何かが起こらないかと心配している。

○ 姉は高2。中学3年の時,両親の厳しさを嫌 って家出をした。

○ 友達も多く,教師との関係も特に問題ない。

○ 特技−陸上競技(100m走,学年で2位)

《2》 バレーボール部顧問から

 入学時より部活動を一生懸命やっている。中1 の2学期から,バレーボール部員で,以前「夜間 徘徊」をし問題になった同級生と気が合い,一緒 の行動が多い。

(3)心理検査−問題性予測検査(DAT)5月実施

 家庭,学校への不満や劣等感を持つ。自己をコントロールできず,規範性を欠く。

5.予測診断(診断)

 息子に対する期待感から父親は厳しく,母親は 過干渉で感情的な養育態度で育てたため,B男の 衝動的で反抗的な性格が形成された。中学入学後, 成績が急激に低下し,劣等感や不満感に悩むよう になった。バレーボール部の練習を一生懸命やる ことによりいらだちを解消してはいるが,世間体 を気にする父親との確執が強まっている。また2 年前に両親の厳しさを嫌って,姉が「家出」事件 を起こしたが,両親は自信を失う一方,厳しさを 強めることで対応した。このような状態で,もし 適切な指導援助がなされないならば,B男の不満 感が増大し,「家出」に至ることが予測される。

6.予防仮説(指導仮説)

 本人との信頼関係を深めることを前提として,担任が中心となり,さりげなく指導援助する。

(1)本人に対して

 《1》 積極的に話しかけ,ラボールを深める。
 《2》 スポーツの得意な本人の長所に注目し,


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