研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -123/137page

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事例3

「不登校」が予測される中学生への予防的な指導援助の事例

1.予測した問題行動    不登校

2.対象   中学校3年 女子(S子)

3.問題行動予測の動機

・ 学級内に親しい友人がなく,周囲から話しか けられても明確に反応できず,黙ってしまう。
・ 二学期当初,頭痛,腹痛を理由にして,遅刻 すれすれに登校することが時々あった。

4.資料

 このままでは学級に溶け込めず,何か問題行動を起こすに至るのではないかと考え,急いで既存の資料等から情報の収集をした。

(1)指導要録,通知表から

○ 本人の知的発達度

・知能 SS53(教研式,中学3年時) 
・学業成績  順位〜中間(187番),期末(252番)  評定〜数学3,保体1,その他2 
・欠席の状況  中学2年  8日(理由 かぜ)  中学3年  3日(理由 かぜ,腹痛)

(2) 家庭との連絡から

○ 家族構成と家族システム

家族構成と家族システム

○ 本人への養育態度

・ 父−兄と比べると甘く,しかることが少なかった。
・ 母−本人は,生まれて間もなく肺炎を起こして入院したことがあり,過保護な育て方をしてきた。最近,学習のことで過干渉ぎみになり,厳しく当たることが多くなった。

○ 対人関係

・ 友人関係は,他学級の特定の友人に限られ,数は少ない。 
・ 小学校時代の遊びの特徴−近所の子供達とは遊ばず室内に一人でいることが多かった。

○ 本人の性格

・ 神経質,き帳面,劣等感を持ちやすい

 (3)教科担任の話から

・ 授業中にぼんやりしていることがあり,学習成果も思わしくない。特に,体育の実技に対する意欲に欠けている。 
・ 体育や特別教室などへの移動にも遅れがちである。

5.予測診断(診断)

 幼少時から虚弱な体質だったため,過保護な養育を受けて,神経質で忍耐力に乏しく,おく病な性格になった。そのため,友人関係や集団の活動について行けず,孤立がちになり,行動がスローになっていった。学業面では意欲がなく,劣等感が強い。また,現在も身体は丈夫とは言えない。

 一方,最近,進路の問題もあり,母親が厳しくしっ責しがちである。現時点では,学習面以外は両親との関係が安定しているため,問題行動は顕在化していないが,もし適切な指導援助がなされないならば,「不登校」に陥るものと予測される。


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