研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -125/137page
事例4
「不良交友」が予測される高校生への予防的な指導援助の事例
1.予測した問題行動 不良交友
2. 対象 高等学校1年 女子(A子)
3.問題行動予測の動機
一見したところ,ごく普通の生徒に思えたが, 入学後2カ月の間に気になることがあった。
・突然,赤いソックスで登校し,注意された。 その時のやりとりの中で,ふだんのA子にそぐわ ない自己顕示欲が感じられた。
・担任が学年初回面接に際して,家族のことを 尋ねると表情がこわばり,「関係ない」という。
4.資料
(1)既存の資料
・ 本人の成績(入学時) 462番中122番 (5月末中間考査) 276番
・ 部活動 (中学) ブラスバンド部 (高校) 未参加(2)面接及び検査からの資料(家族・友人関係 を中心にさりげなく資料収集した。)
・ 教研式PUPIL検査(4月実施6月判明) 規範性はあるが,同時に衝動・神経質傾向も強 く,学校・教師・家庭への不信感が強い。
・ 本人との面接(6月,家庭訪問から) 中学生の時,さ細なことから部顧問と対立。顧 問・担任・両親にしかられた。言い分を全く聞い てもらえず,悲しかった。両親は優秀な兄に期待 している。自分は不本意な入学だったこともあり, 成績も悪く,やる気もわかない。
・ 母親の話。(7月,家庭訪問から) 高校入学後,意欲もなく,遊び中心型の友達に 変わってきた。男の声で電話があり母親が受話器 を取ると切れてしまうことがあった。
・ 親子関係診断検査(8月,家庭訪問から) 父親,母親ともに拒否傾向が強い。父親は厳格 さで,母親は期待感で危険ゾーンにある。母親は 普通に愛情を表現しているつもりであるが,A子 はそう受け止めておらず,疎外感が強い。
・ 家族システム
5.予測診断(診断)
両親の期待が兄に集まり,本人に対する養育態 度には拒否的なものがあった。そのためA子の心 の奥で家庭に対する不信・不満の念が強く,それ が学校生活にも投影されている。また,不本意入 学だったこともあり,目的意識が見い出せないま ま成績も低下し,家族関係の中の孤立からくる不 満を外での交友関係で晴らそうとする傾向がある。 基本的に規範性はあるため,現時点で問題行動は 顕在化していないが,もし適切な指導援助がなさ れないならば,「不良交友」に至ることが予測さ れる。
6.予防仮説(指導仮説)
担任を主体とする指導援助とする。
(1)本人に対して
チャンス相談を通じて自然なラポールをつくる。心の中の不満を吐き出させ,浄化を図りながら,新たな目的意識を求めさせる。
(2)家族に対して
両親に対して,家族関係を見直し,一緒に行動