研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -126/137page

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する中でふれあいの機会を多く持つよう勧める。

(3)学校で

 学年会,教科担任との連絡会などで,A子を含 め予防的なかかわりの必要な生徒について,日常 観察や心理検査の結果を参考に共通理解を深める。

7.予防援助(指導援助)の経過

 [さりげないラボールの形成] 

・ 6月,日曜の午後に「近くを通りかかったの で」とA子の家を訪問し,留守番をしていたA子 と話した。学校でと比較して,素直に感じられる。

 [学年での取り組み]

 ・ 家族関係のストレスが予想される生徒につい て,学校で受容的に接し,特に「頭ごなしにしからない」ことに留意した。教師間で共通に理解し, 心にふれていく指導を進めることにした。

 [家庭への指導援助]

・ 7月,学期末考査中の月曜日,定休日のA子 の父親を訪ねた。そうめんのつゆの作り方を教わ りながら,A子の「不信感」について触れた。し かし,「気になるといえば気になるが,格別問題 があるとは………」と,あまり心配していない。 母親は,友達が変わってきたことと,男の声の電 話があったことを少し気にしていた。 

・ 夏休みに入って2日目,夜の9時を過ぎて, 突然,A子の母から電話があった。昨日は8時, 今日は9時半近くなっても帰ってこないという。 駆けつけると,玄関で母親とA子が言い争いをし ていた。A子は,昨夜は中学時代の同級生と公園 で話し込み,今日はC子宅で何人かで集まってい たのだという。興奮した母親とA子に対し,明日, 担任をまじえて話し合うことを提案し帰った。 

・ 翌日,まずA子に「これまでお母さんがして くれたこと」を思い出させ,母親の心配に気づか せた。また,A子には席を外させ,両親に対して, 担任として抱いていた懸念について初めて説明し, 親子関係診断検査を勧め実施した。その結果,拒 否的傾向が高く,厳格,期待感などでも危険状態 にあったことは両親にとって軽いショックだった ようである。しかし,思い当たることも多かった らしく,担任が<ふれあい>の必要を語ると,静 かにうなづいた。 

・ 8月になって,A子から暑中見舞いが届いた。 家族で旅行をし,海の家から書いたものだった。

 [A子の新たな模索]

・ 新学期になって登校したA子に,学校生活に も慣れてきたところで,なにか活動することを勧 めた。しばらくして,A子はブラスバンドがやり たかったのだ,と打ち明けた。 

・ ブラスバンドを始めたA子は,以前に比べて 積極性が出てきたように思われる。明るく談笑す るA子を見ていると,かつて心配したことが不思 議に思えるほどである。

 [その後………] 

・ A子の態度には大きな意欲が見られ,成績も 向上し,進路についても考えるようになった。ま た,両親とはその後も連絡を取り合い,A子を見 守り続けている。学年会でも同様の生徒について 気づきを深め,予防的にかかわることを取り決めた。

8.考察

 この指導援助は,本人に対してのかかわりだけでなく,家族に対してかかわりを深め,ともに問題行動に至る要因を除去しようとしたものである。その要点については,以下のことが言える。

(1)本人の心の不満感情を吐露させ,浄化させ ることによって,新たな目的意識に目覚めさせた。 (2)本人の問題行動を誘発する可能性のあった 家族関係の見直しを図り,一緒に行動することで ふれあいを深めた。 
(3)両親に対する強い不信感を持つ本人に対し て母親の愛に気づかせ,素直さを取り戻させた。 
(4)心理検査の活用によって,家族関係の問題 点を適切な時点で気づかせることができた。 
(5)学校,及び学年の指導体制作りを,早くか ら行い,共通理解を徹底させた。 
(6)指導援助の終了後も,本人のその後を担任 と家族で温かく見守っている。


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