研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -129/137page

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5.予防的な指導援助の要点と基本的な対応

(1)予防的な指導援助の要点
  (調査,事例,相談事例から集約した)

表1〔教師に対する調査〕
問題点の気づき
・日ごろから子供とのふれあいを多くする。
・子供の表情やしぐさなどわずかな変化に気づく。
・対人関係に目を向ける
・親の養育態度など家庭の問題点に気づく。
・日常観察や心理検査を通して子供の性格傾向を把握する。
・既存の資料や情報から問題点に気づく。
指導援助の計画
・問題点の背景を考える。
何らかの形で指導計画を立てる。
本人への指導援助
・子供の気持ちにそった対応をする。
・子供を認め,褒め,励ます。
・子供の話にうなづき,傾聴する。
自分自身に気づかせ,自己洞察を図る。
家族への指導援助
・家庭訪問を実施し,親の協力を求める。
親の話を傾聴し,心情を理解する。
・他の教師の協力を得る。
・必要に応じ,三者面談を実施する。
学級への指導援助
・おもいやりの気持ちをもって接する。
・おもいやりの行動を紹介する。
・本人が集団的に受け入れられ,適応できる配慮をする。
・教育相談的な授業を展開する。
指導体制
・教師間で情報を提供し合う。
学年会を開くなどして共通理解を持つ。
・教育相談係などに助言を求める。
・役割を分担して指導援助にあたる。
表2 〔児童生徒に対する調査〕
・問題行動の種を持つ子供に目を向け,援助する。
・子供の発達過程や心理特徴を理解する。
・子供の悩みの原因を探る。
(家庭の悩み,友達関係の悩み,勉強の悩みなど)
・子供との信頼関係を形成する。
・子供の気持ちにそった適切な対応をする。
(気持ちを分ってあげる,一緒に遊ぶ,褒める,認める,励ます,諭す,体験を話す,見守るなど)
・相互支持的な学級集団を育成する。
・規範意識を育てる。

 

要  点

 

教師の理解

 

子供理解

 

問題行動理解

 

問題点の気づき

 

ラポールの形成

 

 

資料収集
予測診断
予防仮説

 

本人への予防援助

 

家族への予防援助

 

学級全体への予防援助

 

予防体制

 

フィードバック

 

予防援助の終了

 

  表3〔事例〕
事例1
いじめ
 

・心理検査の活用による気づき
・児童の個性や特徴を生かして柔軟な指導
・相互支持的学級集団の形成
・個人の人間的成長と友人関係の調整
・家族関係の見直し

 

事例2
家 出
 

・気づきの視点(日常観察,前担任,指導要領,家庭,心理検査等から)
・本人の長所を生かした学校生活の充実
・両親の安定と受容的な雰囲気の醸成
・部活動顧問との連携

 

事例3
不登校
・ラポール形成
・クラス内での対人適応
・家族のふれあい
・学年の共通理解と指導体制
事例4
不良交友
・本人の心の浄化と目的意識への覚醒
・家族(親子)関係の見直し
・家族への指導援助における気づきのタイミング
・学校及び学年の指導体制
・指導援助の終了
事例5
暴力
・クラス内の役割指導による責任感,規範性の育成
・目標設定による学校生活の充実
・教師の姿勢による人間への信頼の回復
・家族への援助
・フィードバック
 

相 談 事 例

 表1,2は,教師と児童生徒に実施した調査から,予防的な指導援助に必要と思われる内容をまとめたものである。 これらの内容を基本とし,さらに当教育相談部における相談事例の内容をまとめたものである。これらの内容を基本とし, さらに当教育相談部における相談事例の内容を加味した上で集約しまとめたものが,予防的な指導援助に必要とされる12の要点である。

 なお,調査,事例のそれぞれの内容と12の要点との関係,並びに相談事例の内容の詳細については省略する。


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