研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -130/137page
(2)要点と基本的対応
1.指導援助者の姿勢
(1)問題行動を未然に防ごうとする。
(2)相談的な教師として対応する。
まず,一人一人の子供の健全な成長を心から願い,問題行動を未然に防どうとする姿勢が大切である。このような姿勢があってこそ,常日ごろから子供とのふれあいを大切にし,子供の問題点にいち早く気づき,問題の改善に努力を惜しまない対応が生まれてくるものと考えられる。
また,子供との対応に当たっては,子供の気持ちを大切にし,子供の気持ちに沿った相談的な姿勢を日ごろの授業や生活全般にわたって貫くことが大切である。このような対応が子供との信頼関係を形成し,安心感を与え,心を自ら開かせて,予防援助の効果を高めていくものと考えられる。
2.子供についての理解
(1)子供一般について理解する。
(2)子供個人について理解する。
子供の問題点にいち早く気づくためには,子供の発達過程や心理特徴など子供一般についての理解が必要である。なぜなら,子供の発達段階や性差に応じた心理と行動の一般的な特徴などを尺度とし,成長や発達の遅れやずれなどから子供の問題点を見つけ出すことができるからである。
また,子供の性格や行動,交友関係,家庭環境,学習の状況等,子供個人についての理解を常日ごろから深めておくことが大切である。ふだんの子供の実態をよく把握しておくことが,子供のわずかな変化を見逃さず,問題点に気づくことにつながるものと考えられる。
子供をよく理解しておくことは,資料収集,予 測診断,予防仮説を行う上で,また,適切な予防 援助を実施する上で役立つと考えられる。
3.問題行動についての理解
(1)問題行動の要因や発生のメカニズムについて理解する。
(2)発達段階に見られる主な問題行動について理解する。
予防的な指導援助を実施するに当たっては,問題行動についての理解が必要である。
すなわち,問題行動発生のメカニズムを知ることは,問題行動の元になる兆しとしての問題点に気づき,問題行動を予測する手がかりとなり,素因や誘因,抑制要因について理解することは,子供の問題の背景を探り,適切な予防援助を実施するための手がかりになるものと考えられる。
さらに,発達段階に見られる主な問題行動につ いて理解することは,子供の問題点にいち早く気 づき,その問題に合った適切な予防援助の手を打 つ上で重要になる。
4.問題点の気づき
(1)身体・生理面の問題点に気づく。
(2)知能・学業面の問題点に気づく。
(3)性格・行動・情緒面の問題点に気づく。
(4)対人関係の問題点に気づく。
(5)環境面の問題点に気づく。
(6)考え方・生き方の問題点に気づく。
問題行動の発生を予防するには,問題行動が顕在化しない段階での子供の問題点に気づくことが大切である。この時点での子供の問題点は見落としやすいので,日常の子供とのふれあいの中で子供のわずかな変化にも気を配り,意識して資料に目を向け,情報に耳を傾けることが必要である。
子供の問題点はいろいろな面に現れやすい。したがって子供本人のみならず,家庭環境等いろいろな角度から気づくことが大切である。