研究紀要第77号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -132/137page
8.家族への予防援助(指導援助) (1)ラポールを形成する。
(2)問題点への気づきを図る。
(3)問題点の改善,解決を援助する。
(4)抑制要因の強化を援助する。
親の養育態度や姿勢,生き方,家族の人間関係などは,子供の素因形成に大きな影響を持っており,それは時として,問題行動に走りやすい状態を生みだしたり,問題行動発生の直接のひきがね(誘因)となったりする場合がある。家族に対する予防援助はこれら素因,形成要因,誘因にかかわる家族の問題にアプローチすることである。
実際の対応に当たっては問題点の改善解決を性 急に求めず,親の立場を尊重し,話を傾聴するな どして十分ラポールを形成することがまず大切で ある。その上で,問題点に気づかせ,自ら解決し ていけるような予防援助並びに抑制要因を強めた りする予防援助を実施する必要がある。
9.学級全体への予防援助(指導援助) (1)学級全体の望ましい人間関係を作り,相互支持的な集団の雰囲気を醸成する。
(2)規範意識を持たせ,けじめと規律のある学級集団を育成する。
(3)本人が集団に受け入れられ,適応していけるよう,友人関係を調整する。
学級内の人間関係は本人の素因形成や誘因として大きくはたらくことがある。また反対に,問題行動の抑制として大きな力になる場合もある。このため,これら要因の改善や解決,強化を目指した予防援助が基本になる。
問題傾向を持つ子供は,学級集団から逸脱した り,孤立したりする傾向を持ちやすい。したがっ て,本人が集団に受け入れられ適応できるよう友 人関係を調整する必要がある。そのためにも,常 日ごろからの子供どうしの望ましい人間関係を醸 成したり,規範意識を育てたりする学級全体への 予防援助が大切になる。
10.予防体制(指導体制) (1)組織としての体制を整え,予防的な指導援助の意識を高める。
(2)役割を分担し,協力して本人の予防援助に当たる。
(3)必要に応じ,関係機関との連携を図る。
本人の予防援助に当たっては,予想される本人の問題行動について共通理解を図り,情報を提供し合い,役割を分担して予防援助に当たっていくことでさらに効果が上がるものと考えられる。
そのためにも,学校全体の予防体制を整え,日ごろから研修,研究を通して予防的な指導援助の必要性を認識し,理解を深めておくことが大切である。
また,医学的な問題が予想される場合などは, 必要に応じて関係機関との連携を図ることが大切 である。
11.フィードパック 資料収集・予測診断・予防仮説・予防援助 のそれぞれの過程でフィードバックする。
予防的な指導援助の一連の過程で,資料収集が 十分なされているか,予測診断,予防仮説が正し いか,実施した予防援助の内容や方法が適切であ るかなどを随時振り返り,評価していくことが予 防援助の効果を上げる上で必要である。
12.予防援助の終了 (1)終了の判断をする。
(2)その後の様子を見守る。
問題行動の素因や誘因が改善,解決または除去され,問題行動が発生しないと判断したとき,予防的な指導援助を終了する。しかし,その後も再び問題の傾向が現れないように,本人の様子を見守り,必要に応じて援助の手を差し伸べていくことが大切である。