研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -047/135page

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4.分析と考察
(1)「よさ」の把握について
1 基礎的・基本的な内容の面から
 扱う題材における表現と鑑賞の領域から,基礎的・基本的な内容と指導内容の分析をした。
 これらの内容を,鑑賞,発想・構想,下絵の製作,彩色,仕上げの各段階に組み入れた。
 精選した指導内容は,各段階の目標となり指導過程の中で,児童の作品や活動としてより具体化されていったものと考える。
 また,教材として取り上げた物語の主題を「人々の善意や生き方の美しさ」ととらえ,教材の価値として設定した。このことは,児童の表現の主題とも結びついていったと考える。
2 児童一人一人の「よさ」の把握の面から
 「よさ」の把握の第一段階として,児童の全人的な「よさ」をとらえた。昨年,国語科で調査した資料である。
 第二段階として,「図画工作科への興味・関心」,「題材別での興味・関心」,「『想像して描く』の各段階での興味・関心」の調査である。これらの調査結果は,児童一人一人の「個人カルテ」に記録して指導にあたった。
 第一段階で行った「よさ」の把握は,集団の中の個としての特性をとらえることによって,児童一人一人の「よさ」を集団へとかかわらせる上で有効な資料となった。
 第二段階の「よさ」の把握は,指導の各段階,とりわけ「よさ」を生かす指導の段階で,「座席表の活用」や適切な「助言指導」に役立ったと考える。

(2)「よさ」を生かす指導について
1 基礎的・基本的な内容の定着の面から
 「物語の絵」の表現活動において,物語そのものの内容的な価値をとらえ,それとの出合いによって触発される児童一人一人の見方や感じ方に基づいた表現意図を,より効果的に絵に表現させるために「学習の手引」を活用させた。
 この手引は,学習活動の各段階で定着させようとする基礎的・基本的な内容を理解しやすく解説したもので,学習の各段階で身につけるべき内容のポイントとして,表現の発想から仕上げまでの各段階を通して有効に機能していったと考える。
 また,材料・用具の扱いや彩色の技法の「よさ」を生かすために,「表現の手引」を活用させた。
 この手引は事前の「表現遊び」の実践の中でも用い,いろいろな材料・用具の扱いや彩色の技法を経験させた。そのことが,本実践の中にも生き,児童はこの手引を自由に用い,工夫して作品の製作にあたっていた。
 基礎的・基本的な内容の定着が図れたことを評価するとき,児童自身の自覚の変容も大切な要素と考える。そこで,児童に事後の感想を記述させてみた。その結果を分類したものが下の表である。
 この結果から,本題材でねらう基礎的・基本的な内容の定着が図られ,表現技能の確実な転移がなされたと思われる。関心・態度の変容とともに,児童の確かな自覚の表れであると考えられる。
<表2−1>児童の意識調査
 
基礎的・基本的な内容について 児童一人一人の「よさ」について
    ≪基礎的・基本的な技能≫
・クレヨンの新しい使い方が分かった。
・どのように表すか考えることができた。
・いろんな道具を使って自分の絵に合う色をつけられた。
・表すものを大きく描くこととたいしょうてきに書くことを覚えた。
・色の使い分けや重ねぬりの方法を覚えた。
(33名中28名同様の記述)
    ≪表現の仕方の「よさ」≫
・かきたいことが大きくかけた。
・自分の気持ちや考えていたことを絵に表せた。
・本当に思ったことをかくことができた。
・細かくかくことができた。
・友達のよいところを参考にしてかけた。
・表すものの全体がよく表わせた。
・ものが目立つようにかけた。
(33名中33名同様の記述)
    ≪関心・態度にかかわる面≫
・とても楽しい図工だった。わたしも,いろんな道具でまたかいてみたい。
・こんな図工があるといいな。きれいな絵ができました。
・いろいろなやり方や道具で,ていねいに,きれいに仕上げた
・いろんな道具をつかって,自分なりに工夫できた。
(33名中19名同様の記述)
   ≪活動の「よさ」について≫
・みんなによくわかるように発表した。
・まじめにやったので.早く進んでよかった。
・自分の考えを言えた。
・みんなと一緒にやったりして,自分ではよくできた。
・たくさん発表できてよかった。
・友達の意見をよく聞けた。
(33名中28名同様の記述)

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