研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -048/135page
2 児童一人一人の「よさ」を生かす面から
「よさ」を生かすための手だてとして「ひらめきカード」,「発展カード」,「座席表の活用」がある。
「ひらめきカード」には,物語によって感動したこと,描きたい情景とそのイメージ,材料や用具の工夫等を書かせた。それを基にしてアイディアスケッチをさせ,自分なりの構想・計画として「よさ」を追求させた。
手だてそのものは,「よさ」を生かす具体的な活動や資料として有効であったと考える。しかし,たくさん描いたアイディアスケッチの中から,どれが本当に児童の「よさ」を生かすのに適したものなのかを選択させるような指導も必要であったと考える。
「発展カード」は,指導の各段階において効果的に活用され,児童の作品の中に友達の評価や教師の評価が生かされていたと思う。ただ,評価の観点が児童一人一人に一律でよかったのかどうかは疑問の残るところである。一人一人に合った,具体的な観点を模索する必要があろう。
「座席表」は,記録としての個人カルテとの関連で指導全体を通して有機的に活用された。単位時間の中では,児童一人一人に具体的な指導や助言をするのに役立った。題材の指導全体を通しては,児童一人一人の「よさ」を個別にとらえ.継続して生かす上で有効であった。
(3)「よさ」の意識化について
1 基礎的・基本的な内容の定着の面から
学習の各段階を追って,児童は「学習の手引」や「表現の手引」を有効に活用していった。
具体的な作品と活動を通して,各カードの基礎的・基本的な内容の定着を図る観点からの相互評価や自己評価は有効であった。
2 児童一人一人の「よさ」の意識化の面から
学習過程で表れた児童一人一人の「よさ」を意識化させるために,「発展カード」を用いて班活動による相互評価と自己評価をさせた。
指導の各段階に応じて,「発展カード」によって,繰り返し活動させたり確認させたりしたことで,具体的に児童自身の「よさ」が意識化されたものと考える。しかし,意識化が一時的なものに終わることもあり,児童によっては,継続的・発展的に意識化させる手だてを講じる必要がある。
(4)「よさ」を伸ばす指導について
1 基礎的・基本的な内容の定着の面から
学習過程における表現技法の工夫や材料・用具の扱いの工夫は,図画工作科における知識や技能の習得の上で,大切な要素である。「学習の手引」や「表現の手引」,「発展カード」は,知識や技能の習得の面で有効な手だてであった。
また,これらの手だてを用いて繰り返し指導することによって,基礎的・基本的な内容の定着の確認がなされていくものと考える。
児童K.Kの活動の経過を追って
アイディアスケッチ
彩色過程の作品(班の発表会の様子)