研究紀要第79号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第3年次」 -061/135page

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4.分析と考察
(1)「よさ」の把握について
 まず,基礎的・基本的な内容について,身につけさせなければならない言語材料を洗い出すとともに,3領域4技能とのかかわりから,指導事項を精選した。
 次に,生徒の持つ「よさ」について,学習全般(学習方法,学習形態等)に関する調査,英語科学習に関する調査(目的意識,興味・関心,4技能について得意な面・不得意な面)から,多面的に把握した。
 これらは,単元の指導計画の立案や表現特性を生かした学習活動や言語活動の設定を行う上で有効な資料となった。
 また,指導の展開に応じて適切な指導助言を与える上でも,有効に働いたと考える。

(2)「よさ」を生かす指導について
 把握した生徒一人一人の「よさ」を生かすために行った具体的な手だてについて,生徒の学習への取り組みの様子と事後に行った調査結果をもとに考察を加えたい。
1 表現特性に応じた学習活動
 言語材料及び教材内容の定着を図る過程において,生徒一人一人の持つ表現特性に応じる学習を取り入れた。つまり,「聞く・話す」,「読む」「書く」の中から,自分の得意とする方法を選択して学習できるようにした。このグループ学習を通して,生徒一人一人が学習したことをお互いに交流し合うことにより,相互に高め合ったり,お互いの持つ「よさ」にふれることができるようにした。
 具体的には,次のような内容について,学習プリントを用いて学習を進めた。
○「聞く・話す」
 プリントに示された絵の内容に合った英文を考え,お互いに絵についての説明を行い,その聞き取りをする。
○「読む」
 プリントに示された文章を繰り返し読み,そのあらすじをつかみ,お互いに確認し合う。
○「書く」
 プリントに示された絵について,絵の内容を表す英文を書き,お互いに確認し合う。
 この学習の意図は,単に基礎的・基本的な言語材料や教材内容の定着を図ることだけでなく,自分の得意とする表現方法を生かして学習に取り組むことを契機として,「よさ」を生かしての言語活動の展開につなげることをねらったものである。
 この点から,生徒の学習への取り組みの様子を考察する。
 生徒は,プリントをもとにして,主体的に課題に取り組んでいた。まず,各自が一人で課題に取り組み,その後,「聞く・話す」グループは.お互いにペアになってやりとりを行い,「読む」,「書く」グループでは,班長を中心に答えを確かめ合うなど,協力し合いながらの活動が見られた。
 このような活動を第4時,第6時に行ったわけであるが,この学習に取り組んだ後の生徒の感想を紹介する。
<表3−1>生徒の感想
○「聞く・話す」グループ(A男)
 話すのが得意だったから,友達に話すことができてよかった。
 それに聞くこともできたから,とてもよかった。
○「読む」グループ(B子)
 私は・英文を読んだりするのは.けっこう好きなので,積極的に活動した。
○「書く」グループ(C男)
 自分で.文を作ることができたし,友達にも教えてやったりした


 この感想からもわかるように,それぞれのグループの中で自分の表現方法を生かし,意欲的に学習に取り組んでいる様子がうかがえる。
2 座席表の活用と表現特性を生かす意図的指名
 表現特性に応じた学習活動を行う際,生徒一人一人の学習の様子を観察し,それぞれの生徒の課題に対しての見方や表現の仕方の「よさ」を座席表に記入した。これをもとにグループでの学習の結果を交流させるために,意図的指名を行った。その中で生徒の持つ「よさ」を生かすとともに,課題に対しての多様な見方や表現の仕方があることに気づくことができるようにした。

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