研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -092/135page
「情報手段の理解と操作能力を高める」実践例
―機械科電気基礎の指導を通して―
現代の産業社会は, ME (Microelectronics)化に代表される急激な技術革新の進展と情報化,国際化等によって,産業構造,就業構造が大きく変化している。それに伴って工業高校における教育内容,方法に改善が行われている。工業高校においては,これからの高度情報社会を生き抜いていくために必要な資質を育成することが大変重要な課題となってきている。
本研究ではこれらの現状を踏まえ。研究協力校機械科電子機械コース1年生(43人)を対象に科目「電気基礎」を通して情報活用能力の育成を図ることにした。
1 実践計画の概要 (1)事前調査の結果と考察
評定尺度IとIIの調査結果は,図1のとおりである。
1 評価の低い要素について
評価の要素を低い順に整理すると次のとおりである。
要素 平均 内容
・J (1.9) 情報科学の基礎を理解する。
・K (2.4) 情報手段の特徴をとらえる。
・L (2.5) 情報手段の基本的な操作をする。
・D (2.8) 新たな情報を創造する。
・G (3.1) 情報化の進展のもたらす影響を理解する。
この結果から,コンピュータはどのような機能・構造・特徴をもっているかの理解が不足しており,コンピュータを自ら操作することが十分にできず,新たな情報を創造するまでに至らないことが分かる。その理由としては,小中学校ではコンピュータの導入がほとんどなかったこと,また,生徒個人ではクラス全体の―割程度の者しかパソコンを所有していないということから,コンピュータを実際に操作したことがなく,「触れ,慣れ,親しむ」という経験をしていないからであると考えられる。
2 評価の高い要素について
要素 平均 内容
・F (4.4) 情報化社会の特質を認識する。
・H (3.8) 情報の重要性を認識する。
・T (3.6) 情報に対して責任をもつ。
・C (3.5) 情報を主体的に処理する。
これらの要素で高い得点が得られた背景としては,高校に入学したときから工業高校生徒として情報技術の習得が必須であると指導をしていることに加え,日常の生活の中で少しずつ情報の重要性を実感していること,また,生徒が扱う情報に,伝達の仕方でいろいろな影響を友人に与えることの体験などが考えられる。そのため,情報は主体的に処理しなければならないと判断している。
図1事前調査(評定尺度TとII)
(2)研究実践の構想
1 研究の視点
評定尺度IIの事前調査結果から,低くなっているJ基礎,K特徴,L操作を向上させるため,科目「電気基礎」の単元「電子計算機」を通して,情報活用能力を育成する研究実践を行うことにした。K特徴,L操作を向上させるには視聴覚機器等を利用することが有効であるので,生徒にふさわしいソフトを探し利用する。最も低いJ基礎を高めるためには,初心者にも分かりやすいBASIC言語によってプログラミングの実習をする。