研究紀要第80号 「情報活用能力の定着と個性の伸長に関する研究 第2年次」 -091/135page
(1)事後調査結果について
評定尺度I,IIにより事後調査を実施した。
事前事後調査結果の比較は下図のとおりである。
図5 評定尺度Iによ 図6 評定尺度IIによ
る事前・事後調査比較 る事前・事後調査比較
1 評定尺度Tについて
資料の収集,処理を通して新しい情報を生み出し,発表するなどの体験をさせたことにより,「新たな情報を創造する力」(事前2.7,事後3.4)が向上した。情報手段の理解と操作能力(平均で事前2.4,事後3.6)が高まり,高度情報社会の特質も的確に認識できるようになった。また,この授業を契機として生徒たちに自主性や主体性が身に付いてきたように感じられた。
2 評定尺度IIについて
全体平均では,評価が事前3.0から事後3.3へと上がった。このことは生徒各自が無意識の中に情報活用能力を身に付けてきているためと推測される。今回研究の視点とした「情報の処理と創造力の育成」では,「情報を主体的に収集する力」が最も伸びている(+0.4)。コンピュータクラブに所属している生徒は,自分を厳しく評価するタイプが多いので実際より伸びの割合が数字の面では少なかったものと考えられる。「新たな情報を創造する力」がまったくない(評定1)と答えた生徒は一人もいなかった。
また,個人を見ると,生徒Tははじめ消極的であったが,D創造を中心に情報の処理と創造力の育成の分野で自信を持ってきた。このような生徒が増えたが,一方では,生徒Sのようにコンピュータ操作に自信をもっていた者が情報化社会を認識し直してやや評価を下げた生徒もみられた。これは,情報活用能力が高まったことで自分に対して洞察力が深くなったからと考えられる。
図7 個人のプロフィール(評定尺度II)
(2)研究の成果と今後の課題
1 生徒が主体的に収集した資料を自らの考えにより加工し,新しい情報を創り出す能力を高めることができた。また,表計算ソフトを利用して実際にコンピュータを操作し,情報を処理する力を身に付けさせることで,全体として情報活用能力を高めることができた。
2 外部から得た情報に更に考察を加えることにより,新たな情報を得させる体験から,情報化社会における情報のもつ価値に気付かせ,「情報の重要性を認識する力」を高めることができた。(事前3.7,事後4.4)
3 何事に対しても主体的でない生徒たちにどのような学習の場を設定し,どのような手だてを講ずればよいか課題となっている。その一つの手段として,コンピュータの有効利用法を考え,生徒の自主性や主体性を伸ばしていきたい。そのためには,生徒たちがコンピュータを継続的に使える環境を整備していく必要がある。
4 今回は表計算ソフトの利用を中心に研究を行ったが,今後は更に検索の機能をもつデータベースソフトなどを利用した授業を展開し,情報活用能力を育成していきたい。また,情報活用能力をより効果的に育成するにはどのような技術・知識が必要であるかを更に検討していきたい。