研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -101/135page
2 予防的な指導援助の具体的対応(手引)
これは,予防的な指導援助をすすめるために,第1年次に導き出された「予防的な指導援助に必要とされる12の要点」における「基本的対応」を,学校現場において,より実践しやすいものに具体化したものである。
なお,以下に示す「対応例」の中の☆印は,『昭和63年3月発行の研究紀要第73号』を意味する。
(1)指導援助者の姿勢
予防的な指導援助を図るためには,指導援助者自身の生き方・考え方などの人間性や姿勢が大切である。
基本的対応 具体的対応 対 応 例 ( 1)問題行動を未然に防ごうとする 1 子供一人ひとりの健全な成長を心から願う。 ○ 「この子は○○の長所を持っていると思う」「この子には明るい未来があると思う」のように考えて接する。 2 問題行動の予防に力を注ぐ ○ 「○○は問題行動に走らないと思う」「○○は問題行動を起こさないと信ずる」と考えて接するなど,一人ひとりの子供の健全な成長に常に関心を払う。 (2)相談的な教師として対応する 1 人間的な温かさを子供に向ける。
2 子供の気持ちを理解する。
3 相談したことを口外しない。○ 子供の行動を建設的に評価し,母性的なかかわりの中で時には父性的な接し方もする。
・厳しさの中の温かさ,優しさの中の力強さ
○ 性急に教師の価値観を押しつけようとせず,子供の心の動きに耳を傾ける。
・「う−ん…… どうして○○なの?」 詳しくは,☆P88(1)参照
(2)子供についての理解
子供の問題にいち早く気づくためには,子供の発達過程や心理的な特徴など,子供についての理解が必要である。
基本的対応
具 体 的 対 応
対 応 例
( 1)子供一般について理解する 1 子供の発達過程とその特徴を理解する。
ア.知的発達を理解する。
イ.身体の発達を理解する。
ウ.心理的発達を僻する。○基本的な発達心理についての理解の場を持つ。
・校内研修会,校内事例研究会,保護者懇談会での話題等
○発達段階の特徴を理解する。
・反抗期,ギャングエイジ,第二次性徴期,性意識 自我の発達,自己一致等
○養護教諭はもちろん同学年や校種別(小・中・高)の先生方とも情報交換をする。
・「最近の保健室の様子はどうですか‥‥‥」2 現代の子供の特徴を理解する。 ○各種資料・アンケートやふれあいの機会から,現代の子供像をとらえる。 (2)子供個人について理解する 1 性格・行動を理解する ○生活の様子から,言葉づかい,服装,基本的な生活習慣等の変化を見ていく。
○性格検査(YG検査等)を実施し,共に考えていく。
・「おとなしいタイプのようだけど,自分としてはどうかな?」2 対人関係を理解する。
ア.友達との関係を見る
イ.教師との関係を見る○生活の様子から.人との交流の仕方を見る。
・ソシオメトリック・テスト等の活用
・教師との接し方3 家庭環境を理解する。 ○「お父さんとは,どんなお話をしているの」等,さりげない日常会話をしていく
○日記等から,厳格,放任,過干渉等の親子のかかわりを見ていく。
○家庭訪問.家庭環境調査等から,親子関係,家族構成,養育態度等を理解する。4 知能や学習状況を理解する ○学習態度(忘れ物,発言,自主学習,集中力等)に気をつける。
・「○○君,さっきの発表はなかなかよかったよ」
○教科担任や部活動顧問の先生から情報を得る。
・「先生の授業で,○○さんの様子はどうですか」
・「○○君は,部活動をしぶっているようなんですけど……」
○知能検査.学力検査や学習の様子について調べる。
・アンダーアチーバーではないか,等5 気持ちや考えを理解する ○日記や作文などから,気持ちの変化をとらえる。