研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -109/135page
3 予防的な指導援助における調査・検査の活用
児童生徒理解のための調査・検査は,予防的な指導援助を進めるにあたって,児童生徒の把握と指導援助の効果を確認するための,重要な方法である。
以下は,効果的な調査・検査の活用のあり方を示し,事例を通して明確にしたものである。
(1)指導援助を必要とする児童生徒の把握
1 基本的な考え方
個々の児童生徒は,個性や生育環境等が異なるため,それぞれの実態に則した指導援助が必要である。その中から指導援助を現実に必要とする児童生徒を把握するためには,まず,全児童生徒について多面的・客観的に実態をとらえる必要がある。全児童生徒を対象とすることは,学級全体への指導を図る上からも大切である。
2 指導援助を必要とする児童生徒の把握の手順
指導援助を必要とする児童生徒を,ア,イのような手順で把握し,抽出する。
ア 児童生徒の理解の方法(図1)
【図1】
イ 指導援助を必要とする児童生徒抽出までの手順(図2)
【図2】
なお,新しく学級を担当する場合は,まず初めに既存の資料の検討をし,児童生徒理解を深めておくことが大切である。表1,表2は,「観察」「既存の資料」等の内容と視点である。
【表1】 児童生徒理解の具体的内容
実態把握の領域 具 体 的 な 内 容 観 察 ・チェックリストを活用し、目的を持つ。
・観察の視点と場面を明確にする。
・指導要録→知能、学力、性格、行動の特徴
・学習成績記録表→成頴の変動など
・出席簿→遅刻、早退、欠席の有無と特徴など
・学級経営誌→各種検査記録表、家庭訪問記録既存の資料 ・家庭環境票→家族構成、生育歴、養育態度
・その他(作文、グループ日誌、健康記録表等)面 接 ・資料収集としての目的を持って行う。 心理検査 ・目的、方法、時期、対象などを明確にして行う。
【表2】 観察等の視点(一例)
教師の日常観察
家族や先生方からの情報
反社会的行動 ・視線を合わせない・いたずら・いじめ ・廊下やトイレでのたむろ 非社会的行動 ・いじめられ・自己主張できない反応の弱さ・保健室へこもりがち・他を受け入れないようなかたい姿勢 言 動 ・言葉づかいが荒い・語調が荒い 服装・髪型等 ・派手な服装 ・髪の長さ,形が華美 学業関係 ・提出物を出さない・成績の急激な低下 出席関係 ・遅刻,欠席,早退の増加・部活動の休み
対人関係 ・友人関係の変化・家族との会話の様子・父母との関係 家庭環境 ・父母の養育態度・父母の関係・父母の逓業・小遣い・帰宅時間
3 調査・検査の活用
ア 検査の目的と心理検査の・種類
【表3】 主な目的別心理検査
検査の目的 主 な 種 類 学 習 面 ・知能面
・学力面
・田中ビネー知能検査 WISC−R知能検査
教研式知能検査 田中式知能検査(各種)
TK式知能検査(各種)東大A−S知能検査
京大NX知能検査 田研式知能検査
・TK式学力検査 教研式学力検査 FIGHT
AAl学習適応性検査 等心理面 YG性格検査 MG性格検査 エコグラム GAT
DAT パウム・テスト 精研式文章完成法(SCT)
絵画統覚検査(TAT)マルチテスト PST 等身体・生理
生き方・考
え方・環境
面 などCMl健康諷査表 GHQ精神健康調査表
S−M社会生活能力検査 AAI学習適応性検査
教研武道徳性検査 労働省編職業適性検査
田研式職業適性検査 ソシオメトリック・テスト 等