研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -117/135page

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 事例2


         「不良交友」が予測される中学2年生への予防的な指導援助
               〜学級の凝集力を高めるかかわりを通して〜

               

        (指導援助者は学級担任,35才,男性,理科担当)


1 予測される問題行動   不良交友

2 対 象   中学校2年生 男子(K男)

3 問題行動予測の動機および関連費料

○学級編成替えがあり,新学級としてスタートした。口数は少ないが,学級内での言動には,威圧的で横柄な面が見られる。
○1年生時の指導要録によると,学習成績は5段階評定で,保体が4その他は2。『学習への意欲は低いが,野球部への意欲は旺盛』との表現があった。前学級担任からは,『部活動の先輩を中心としたつっばりにあこがれる傾向がある』との情報を得た。
○家族システム・力動図
     (K男との面談および家庭訪問より)
 父……船 員 46才  母・…‥会社員 46才
 祖母…無 職 76才  姉……会社員 20才
家族システム・力動図
○親の養育態度
 姉は高校生のころまで問題行動が多く,父親が留守がちということもあって,母親の注意や関心は姉へ向けられた。そのため,K男の存在感は乏しかった。姉の就職後も母親の仕事が忙しく,K男へのかかわりは薄かったが,姉のようになることへの不安から,褒めるよりしっ責することの方が多かった。父親の不在からくる母親のあせりも感じられる。
○YG性格検査の結果から,情緒不安定で社会的不適応の傾向,特に攻撃性,非協調性が強いことが読み取れる。また,2因子間の隔たり(Ag−g)で見ると,「陰気な沈滞的気分」と「強気な自尊心や積極性」が混在する複雑で不安定な状態も伺える。(プロフィールは後掲)
○部活動への意気込みは2年生になってからも変わらず,熱心に練習をしている。
 ソシオメトリック・テスト(5月中旬実施)や日常観察によれば,学級での人間関係を軽視し,部活動を通しての先輩後輩の関係だけを重視しているようである。また,部活動の先輩たちは,校内の「つっばりグループ」と関係がある。
 しかし,本人のそのような意識とは別に,学級での人望はかなり高い。
 ソシオメトリック・テストでは,選択3(相互選択2を含む)排斥5(相互排斥2を含む)被選択9 被排斥2である。
○学級全体の雰囲気は静かで,K男は物足りなく感じている。また,学級は,学校行事などで団結するという雰囲気は少ない。

4 予測診断

 母親はK男に対して「姉とは違って,長男らしく。」との願いや期待感が強かったが,仕事の忙しさから年老いた祖母にK男を任せるしかなく,事あるたびに”しかる”だけの養育態度だった。やさしい祖母としっ責のみの母親の間で,K男は情緒的に不安定であり,しかも,父親のかかわりの乏しさもあって,規範性や耐性に欠けている。
 また,母親の目が姉へ向いているときは寂しさを,母親からしかられるときは理解されないくや

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