研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -121/135page
事例3
「集団暴力」が予測される中学1年生のグループに対する予防的な指導援助
〜一人ひとりの特性をとらえ,より個別的なかかわり方を通して〜
(指導援助者は学級担任,35歳,男子,英語担当)
1 予測される問題行動 集団暴力
2 対 象 中学校1年生男子(A男・B男・C男)
3 問題行動予測の動機
○A男は4月から同じクラスのB男,C男とグループをつくり,休み時間に歩き回っている。
○5月の連休が明けてまもなく,A男たち3人はトイレで,2年生のグループとにらみあった。
○3人でクラスの中の弱い者や,女子へのいやがらせをするところが見られた。
4 資 料
(1)A男について
○YG性格検査 B型 (4月実施)
気分の変化が激しく,非協調性,攻撃性が高い。
○反抗的態度が多いため教師もイライラし,相互不信的態度になる場合がある。
○部活動はバスケットボール部に所属。成績は1学期中間テストで225人中181番。
○小学校6年生の時の担任から「性格は明るいほうであるが,粗暴で逸脱的なところがある」との話だった。
○家族関係(4月一斉家庭訪問から)
父親は,石材関係の仕事をしていたが,A男が6年生になってまもなく脚をけがして仕事を休んでいた。その後,回復したが「療養中」と称して仕事をせずに,昼間から酒を飲んで暴れたり,A男を殴ったりすることがあった。A男の父親への不信感は根強いものがある。
母親は,「療養中」の父親に代わり外に出て働き,一家の家計をきりもりしている。そんな母親を,A男は頼りながらも反発している。
祖母は,A男を溺愛して育てた。
家族システム・力動図
(2)B男について
○YG性格検査 A型 (4月実施)
一般的で安定しているが,劣等感がやや強い。
○部活動はバレーボール部に所属。成績は,1学期中間テストで225人中165番。
○性格は明るくひょうきんで,クラスの中ではみんなをよく笑わせ陽気にふるまう。調子がよく,授業中,騒いだりルールを守らないことが多い。
○家族関係(4月一斉家庭訪問から)
父親は農業専業。無口である。母親は,会社勤め。祖母の手で溺愛され育てられた。
(3)C男について
○YG性格検査 C型 (4月実施)
協調的で情緒も安定している。内向的で寂しがりやである。
○部活動はバレーボール部に所属。成績は1学期中間テストで225人中190番。
○家族関係(4月一斉家庭訪問から)
両親共働き。小学校4年生から鍵っ子で一人遊びが多い。母親の養育態度は過保護,過干渉的。そのため,C男は神経質でおとなしい。
(4)学級の様子と3人
1 学級の雰囲気は,静かでおとなしい。
4月のAAI学習適応性検査結果では,学習への適応は比較的高かった。