研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -125/135page
事例4
「不登校」が予測される高校2年生への予防的な指導援助
〜学級の受容的な雰囲気づくりと家族への気づきを通して〜
(指導援助者は学級担任,41歳,男性,社会科担当)
1 予測される問題行動 不登校
2 対 象 高等学校2年生 女子(A子)
3 問題行動予測の動機
○服装・髪型が乱れ,生活態度に落ち着きがなく学級内で孤立している。
○遅刻の日数が2年生になって多くなってきた。
○授業では意欲がなく,態度もなげやりで,学習成績も下がってきた。
4 資 料
○YG性格検査(5月実施)の結果は,B型でやや情緒不安定,社会的不適応の傾向がある。抑うつ性が高く,欲求不満も強い。
○遅刻は4月(7回),5月(12回)と増えている。
○小・中学校では学力も高く,高校入学時は上位であった。
○AAI学習適応性検査(6月実施)結果は,偏差値32。特に学習環境,心身の健康の項目は,いずれも5段階評定で「1」である。
○父親はA子が5歳のとき離婚し,小学校3年のときに再婚した。祖母はそのときA子を連れて別居した。父親の再婚後,生まれた弟二人いる。
最近,祖母が体調をくずしがちなため,近所に住む伯父(父親の弟)の家で祖母ともども食事をしている。しかし,伯父の家族はA子と祖母を必ずしも歓迎していない。A子と祖母,父親,継母,伯父の人間関係は複雑で,A子が不安や不満を真剣に相談できる相手はいない。
○祖母はA子を溺愛し,A子は料理,洗濯,清掃などを家ではほとんどしたことがない。
○A子は看護学校への進学を布望している。
○友人は中学校から少ない。現在はB子を中心に数名の生徒が,A子を受け入れている。
5 予測診断
A子は,幼児期に両親の不和・離婚のため,情緒的に不安定な状態で育った。父親の再婚後,祖母とともに別居して,祖母の溺愛と過干渉的な養育態度のもとに育ったため,生活態度はわがままで自己中心的な面も強い。
また,別居後,親との接触は少なく,漠然とした不満感や不信感を持っている。
基本的な学習能力が高く,勉強も好きだったため,中学校までは学習成績がよく,友達とのかかわりの乏しさをのぞけば,特に問題もなかった。しかし高校入学後,急束に気力を失い,それまで以上に内向化し,成績も下がった。
A子を愛する祖母の存在と,卒業後看護学校に進学したい希望が,現在のA子をかろうじて支えているが,一方では学校への不適応感も次第に強まりつつある。このような状態の中で,適切な指導援助がなされなければ,「不登校」などの問題行動が起きることが予測される。
6 予防仮説
A子の学校生活への意欲を高め,家族関係への見直しを図ることで「不登校」は防げるものと考えられる。
(1)A子への働きかけ
機会あるごとに,優しい言葉や激励の言葉をかけながら,A子の気持ちをときほぐし,しっかりとしたラポールを形成する。また,学習・進路相談を進め,意欲づけを図る。
祖母の手伝いを勧めて.自立心を育てる。