研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -126/135page

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 A子の学級での係活動を生かして,学級内での存在感を高める。
(2)学級への働きかけ
 孤立しているA子を,B子たちの協力を得ながら,学級の一員として認める雰囲気をつくり,温かい友人関係をつくれるように援助する。
(3)家族への働きかけ
 両親や祖母との面接を実施し,家族関係についての両親の気づきを図り,家族内のA子に対する交流を深める。父親,継母,祖母などに働きかけ,環境修正を図る。

7 予防援助の経過

  学級でのA子への対応
 6月,学校生活に意欲を失いかけているA子は,朝のホームルームの時間に遅刻することが多くなってきた。担任は,みんなの前では一方的に厳しく指導することを避け,A子と級友の気持ちを考慮しながら指導した。
担任「困ったね。A子さんは・・・毎朝家の手伝いが大変なのかな?」(周囲クスクス笑う)
A子「・・・先生違うんです。寝坊してしまったんです。すみません。」
担任(しからないで明るく)「そうかあ。じゃあ明日はがんばろうね。」
 このようなやりとりは,A子や学級におだやかな雰囲気をつくるように思われた。
  A子の家庭環境の理解
 6月下旬,電話連絡の後,家庭訪問を実施し,継母から複雑な家庭状況を知らされた。
 「A子には悪いことだとは思っているんですが,現在の別居は事情があって変えられないんです。」と継母は寂しげであった。しかし同時に,A子の学校での様子を知って,A子との温かい接触の必要性に気づくことができたようであった。
  A子とのラポール形成
 A子と行動を共にし,機会あるごとにA子を認め励ますことにした。
 7月の初め,A子は清掃せずに帰宅した。
担任「昨日はどうしたの,なにか急用でもあったのかな?」
A子「・・・」
担任「クラスでの約束だから,今日は窓のガラスふきをしよう。先生も手伝ってあげるからね。」
 終了後,A子はていねいにお礼を言った。
担任「今日は大変だったね。今度は忘れないようにしようね。」
 一緒に作業をしたことで,担任にはA子と今まで以上に話しやすい雰囲気ができたように思われた。
 三日後,A子はかぜをひいた祖母の看病のために学校を休んだ。その翌日,
担任「おばあちゃんの具合はどう?先生にも経験あるけど,病気の人を世話するのは大変だよね。君は本当に優しいんだね。」
A子「わたし,おばあさんと二人きりだし,おばあさんが好きなんです。」
担任「そうか,それじゃおばあさん,幸せだね。」
 祖母に頼り切っていたA子が,祖母の世話をするようになったことは,大きな進歩と思えた。
 学級の他の生徒も,A子に対する担任の考えを理解してくれ,B子を中心に「先生,遅刻のことはA子さんも気にしているようですから,わたしたちがA子さんを誘って,一緒に来たいんですが・・・」と言ってくれた。B子たちに感謝し,しばらく続けてくれるように頼んだ。
 やがてその効果が現れ,A子の遅刻は少なくなってきた。このようなA子への接し方は,学級においても,A子を否定的に考えずに優しく接する雰囲気をつくり出すことになった。A子はしだいに明るさを取り戻し,精神的にも少しずつ安定した学校生活を送ることができるようになった。
  A子への家族の気配り
 7月中旬,教師と親子が面談しながら,通知表を手渡す機会があった。A子を交えながら話し合う絶好の機会であったが,A子は継母と一緒では嫌だということで欠席した。継母は「気をつかってしまって,A子とはあまり話ができないんです」ということだった。
 『話をするというよりも,楽な気持ちでA子の

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