研究紀要第81号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第2年次」 -127/135page
話を聞いてあげる姿勢で接して欲しい。』旨を話した。また夏休みを利用しながら,A子と弟たちとの関係を親密にするための工夫(A子・祖母を含めた家族旅行など)を提案した。
継母はできるかぎり努力することを約束した。
両親との共通理解を図る家庭訪問
8月下旬,電話で連絡し,父親にも会えることを確認のうえ,家庭訪問を実施した。両親からその後のA子の様子と,家族とのかかわりの様子を話してもらった。父親は「現在の別居という形は変えられませんが,弟たちを介してA子との関係は以前よりも良くなったと思います」とのことであった。しかし継母は,夏休みの旅行の計画が,祖母とA子との不参加で実現できなかったことを残念そうに話した。父親にもA子のアパートを訪問する回数を増やし,接触する機会を多く持つように,さりげなく話した。
父親との面接
その後,父親の『家では話せない内容もある。』という言葉から,父親と二人で話し合う必要を感じた担任は,父親に電話し,会社の近くのレストランで会った。A子の生まれたときの状況や別れた妻のこと,祖母や父親の兄弟のことなどを含め今後のかかわり方を話し合った。
親戚も含めて,お互いが無理をしないようにしながらも,祖母とA子へのかかわりを,温かな関係にしていくことであった。この話し合いは,たいへん有意義であり,父親も真剣に考えていることが理解できた。
A子の心にふれるチャンス相談
2学期の始業日,ホームルームの時間の後,8月下旬に街で会った継母のことを話題に,A子に話しかけた。
担任「先日,街で君のお母さんにあいさつされたよ。すてきなお母さんだね。」
A子はかすかにうれしそうな表情を見せた。
担任「中学時代はときどき話することもあったの?お母さんは,君のことをどうしているかってだいぶ心配していたぞ。」
また,父親の再婚後生まれた弟たちの話や,小・中学校時代の思い出も話題になった。A子は最初ためらいがちであったが,やがて両親のことや,離婚してしまった母親のことまでも話をしてくれるようになった。家族の話をするときのA子の表情が少しずつ明るくなった。
祖母への訪問
この機会をとらえ,A子のアパートを訪ねて祖母と会った。何気ない会話の中に,今のA子の考えや父母の気持ちを話した。
祖母「A子はかわいそうな子で‥・私が死んだらと思うと。ほんとうは父親のところに居るのが一番いいんですがねぇ・・・」
担任「A子さんはおばあちゃん思いで,一生めんどうみるつもりで,看護婦を目指しているんです。また心の中では,A子さんも家族みんなが仲よくしたいと思っているようですね。」
祖母もまた,その必要を感じたように思われた。
厚生委員の活動に喜びを持ったA子
2学期になり,A子と相談の上,A子に学級の厚生委員になってもらった。担任は内容と活動方法を助言した。一緒に厚生委員になったB子と共に,活動する姿が見られるようになった。
A子は,体調の悪い級友などに付き添って保健室に行き,世話をするようになった。
放課後,担任はできるだけ教室で生徒たちと過ごすようにした。9月,A子と話す機会があった。
担任「A子さんはそういえば,看護学校希望だったね。」
A子「でもこのごろ自信ないんです。成績も落ちたし無理だと思います。」
そこで,学習意欲を失いかけているA子に対して励ましながら進路目標を設定し,計画的に学習できるように援助することにした。
担任「きみと同じような悩みを持っている生徒が,たくさんいるんだよ。そこを乗り越えなくっちゃ。」
A子「先生,わたしの成績でだいじょうぶでしょうか?」
担任「もう少し計画を立てて勉強すれば,可能性は大きいと思うよ。まず一か月間の学習計画