研究紀要第82号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第1年次」 -024/123page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

4.第1年次研究のまとめ

 本年度は,「個を生かす」学年・学級経営に関する理論研究と,県下各校教師の「個」重視についての意識や条件等の実態調査を進めてきた。

 理論面の先行研究については,「個を生かす」という視点からの各教科等に関するものが多く,学年・学級に関するものはほとんどみうけられなかった。この理由としては,次のことが考えられる。

○ 「個を生かす」ことが,主として,学習指導面での大切な考え方として扱われ,間口の広い学年・学級経営での研究は進んでいない。

 とはいっても,巻末に掲載したように,各学校での取り組みとしては少ないものの,学ぶべき理論書がいくつか刊行されつつある。

 それらのいくつかの理論を踏まえつつ,本研究では,冒頭から一貫して述べてきた4つの視点を軸にして研究構想を練り,調査項目の吟味をしてきた。

 調査結果については,各領域ごとに顕著な回答の出た設問を中心に考察を加えてきたが,総じて言えば,「個」重視の考え方としてはわかるが,実際には,実施困難な場合が多いということになる。

 以下,4つの視点から調査結果を整理し,そのまとめと今後の改善の方向について述べる。

1.「個の存在を大切にする学年・学級経営」という視点から(設問1〜7)

 今まで述べてきた考察でもわかるように,「個の存在を大切にする」考えについては,多くの教師がそれぞれに意識して取り組んでいる。(設問1)

 しかし,全体的に,積極的な取り組みとは言い難い。特に,小学校に比べて中学校,高等学校が「個を生かす場の設定」や「児童生徒と一緒に過ごす時間」を十分に取れないようである。(設問2〜7)これは,主として学級担任がほぼ全教科を指導する小学校と,教科ごとに指導担当の異なる中・高校との違いが要因の一つと思われる。

 また,年代別傾向や自由記述(P.24参照)を見ると,20代〜30代にかけての若い教師は,「個を生かすことの意義」や「個が生かされている状態」について十分な理解がなされていないようである。(意義等,P.2参照)

 これらのことから,各学校において,教職員問の話し合いの場が十分持たれていないため,「個の重視」についての共通理解が図られていないと推察される。

 以上のことから,視点1にかかわる改善の方向として,次のようなことが考えられる。

1 教育課程一般編等を,学年・学級経営の立場から吟味し,個の願いや目標を学年・学級の目標設定に反映させる。

そのために,

○ 「個」の把握のための共通理解を図る。

 ・ 必要な資料等を確認する。

 ・ 資料収集の方法,時期,計画を確認する。

 ・ 資料の分析・整理・活用方法を確認する。

○ 集団の目標と個人の目標の調和を図る。

2 発達段階,学校規模等を考慮して,個の存在を大切にしようとする意識を高める。

そのために,

○ 学年教師の空き時間を週計画の同一時間に位置づけ,「個の存在を大切にする」ための話し合いを,年間通して継続的に


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。