研究紀要第82号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第1年次」 -025/123page

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進める。

○ 開かれた学年・学級経営を目指し,職員室等での日常会話の中でも,他学級,他学年教師との意見交換を気軽におこなうように努める。

○ 一人一人の興味・関心やこだわり等は,日々変化する場合が多いので,固定化せず,柔軟な対応を心がける。

2.「個の特性を生かす学年・学級経営」という視点から (設問8〜15)

 小・中・高校ともに80%以上の教師が「個の特性が十分に生かされているといえない。」と感じている。(設問13)生かされていない理由は,生かす場の設定が難しいこととそのための時間がとれないことである。(設問14)

 これは学級の人数が多い上に教師が多忙なことが主な要因と考えられる。

 また,指導する学級の多い中・高校の教師や小学校の分科担任は,個の特性をとらえることが難しく,個を生かすための援助・指導のあり方が確立しにくいと回答している。(設問8,14)

 このことは,教師一人の力で何クラスもの児童生徒一人一人を生かすことが容易でないことを示しているといえよう。

 以上のことから,視点2にかかわる改善の方向として,次のようなことがあげられる。

1 教職員問の共通理解を図った上で「個を生かす」ための内容・方法を学年・学級経営計画等に位置づける。

そのために,

○ 教師と児童生徒,児童生徒相互の心のふれあいを大切にし,望ましい人間関係を築く場を位置づける。

○ 個と集団の調和を図りながら,共感的理解を基盤にして,「自己選択の場」等自己存在感を得る場を位置づける。

○ 個々人の成長過程が,自分自身で納得できるようにするため,発達段階に応じた自己評価を重視するとともに,小・中・高校を見通した援助・指導をする。

2 教師一人で「個を生かす」ことの「限界」を補い合う学年・学級経営を心がける。

そのために,

○ 個が生かされている事例,個が生かされていない事例をあげ,その背景について話し合う場を学年会等に位置づける。

○ 目立ちにくい子についても,より多面的にとらえるために,潜在的なものに留意するとともに,生徒指導主任,養護教諭,事務職員,用務員等のさまざまな情報を正しく活用する。

3 個の発達段階,学力等の違いを踏まえ,小・中・高校の一貫性を見通しての柔軟な指導及び学習が可能となるような,学年・学級経営を進める。

そのために,

○ 学級,学年の枠を越えた編成等によって,多様な形態を通しての「自学の時間」を取り入れる。

○ 教師主導型の授業から,児童の考えを重視した授業へと授業観を変換し,「問うこと」と「自己評価」を重視した教育活動を心がける。

○ 多様な学び方の習得が可能となるように,教育課程や授業研究の中に,教材や個に応じた学習方法を位置づける。

○ 学校規模や集団及び指導教師の特性・特色を踏まえ,「個の特性を生かす」場や時間の確保に努める。


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