研究紀要第82号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第1年次」 -026/123page

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3.「認知的側面と情意的側面の調和」という視点から(設問16〜20)

 小・中・高校ともに,認知的側面と情意的側面の調和に意を払っているが,現実には困難なことが多いようである。(設問17)

 その理由としては,指導内容・方法及び評価がわからない,環境や条件が整備されていない,といった声が多い。(設問18)

 また,年代別傾向をみると,若い教師ほど個を生かす場の設定や個を生かすための配慮等の仕方が十分理解されていないようである。(設問19〜20)

 これらのことから,各学校の教師は,認知的側面と情意的側面の調和を図るようにしているものの,学校全体としての取り組みにまでは至ってなく,指導上の迷いも感じられる。

 以上のことから,視点3にかかわる改善の方向として,次のようなことがあげられる。

1 認知的側面と情意的側面との調和を図る評価のあり方について,全教職員の共通理解を図る。

そのために,

○ 認知的側面と情意的側面との調和を図ることができた事例や調和を図ることができなかった事例を収集し,学校規模や集団の特性に応じた指導内容・方法を明らかにする。

○ 児童生徒中心の評価活動を重視し「減点主義から加点主義」「欠点指摘型から長所伸長型」へと評価活動の転換を図る。

2 児童生徒自身が自己理解を深め,自己の課題を明確にしながら自力解決を図り,目標をもって意欲的に取り組む態度を育てる。

そのために,

○ 個々のこれからの目標や計画について,認知的側面と情意的側面との両面からの援助・指導を心がける。

○ 一人一人が共に学ぶ喜びを感得できる場や雰囲気づくりに努め,自己決定や自力解決の場と,体験的活動を重視する。

4.「個性豊かな生き方のための基礎・基本の習得を重視する」という視点から (設問21〜23)

 小・中・高校を通して,4つの視点中,無回答が最も多かった。設問そのものが難解であったということも考えられる。しかし,自由記述等の回答結果を分析すると,「多忙な上に,児童生徒数が多くて,個性豊かな生き方のことまで十分に吟味する余裕がない。」という声が少なくない。

 また,校種別や年代別によって,設問21〜23に対する回答傾向等の違いが顕著に表れている。(P.7,23参照)

 その要因として次の2点が考えられる。

・ 児童生徒の側面からみると発達段階に応じてその特性に違いがみられるので,校種によってその対応が異なること。

・ 教師の側面からみると経験年数,年代や校種に応じてその教育観,指導観にかなり大きな違いがあること。

 さらに,設問21〜23を通していえることは,今後何を基礎・基本として大切にし,どのような援助・指導をすべきかについて,多くの教師が迷っているということである。

 以上のことから,視点4にかかわる改善の方向として,次のようなことがあげられる。

1 発達段階や個々の実態に応じて,個性豊かに生きるための基礎・基本を明らかにし,学年・学級経営を定着させるための「場」や「時間」を位置づけ,ていねいに根気強く援助・指導する。

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