研究紀要第82号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第1年次」 -027/123page
そのために, ○ 基礎・基本を単に指導内容としてのみとらネるのではなく,学び方や学ぶ態度・意欲等にまで及ぶものとしてとらえ直すための共通理解を図る場を持つ。
そのうえで,どの個にも共通する課題(そろえるべき,閉じた目標)と,個々人ごとに異なる課題(違えるべき,開いた目標)とを明確にして,教育課程や学年・学級経営計画に位置づけ,継続的に指導する。
○ 「しつけ」や「学び方」は,集団行動を通すべきことと個々人ごとであるべきこととを区別して援助・指導にあたる。
その際,可能な限り,個々人の考えや生き方がよりよく生かされるように留意する。
例えば,学び方については,他を認め,互いに生かし合うための共通の学び方が必要であると同時に,その個にあった個性的な学び方をも大切にすべきである。
○ 教師は,個々の児童生徒のありのままの姿を直視し,よりわかろうとしながら,より多くの機会をとらえて援助・指導していくようにする。
「個が生かされる」学習環境としての物的環境,人的環境を整備・活用する。 ○ 児童生徒の自発的な学習活動を促すために,可能な限り教材・資料の分散管理を進め,教室に多くの教材,資料を準備する。
○ 多目的スペースや空き教室を利用して,学習環境の整備をし,常設,仮設による弾力的運用ができるようにする。
○ 開かれた学年・学級を目指し,学年の枠を越えた人的交流を図るとともに,地域社会や家庭との緊密な連携を図る。
○ 教師は,個を「よりよく生きていきたいと願っているかけがえのない人間」として受容的に理解することに努め,最たる人的環境として教師自身の自覚を高め,そのための研修に努める。
5.今後の課題
以上,研究の4つの視点からのまとめと改善の方向について述べてきた。
次年度(2年次)は,今向の実態調査で浮きぼりにされてきた「個を生かす」ための問題点等を,研究協力校の実践を通して,さらに,いっそう深め,そのための改善・充実策を明らかにしていきたい。
以下に,次年度の研究について,取り組むべき課題を整理して述べる。
1.研究協力校の実践を通して,「個を生かす学年・学級経営」の改善・充実策をまとめる。
そのために, ○ 「個を生かす」ための内容・方法を教育課程や学年・学級経営に位置づける手順等を明確にする
○ 学校規模,校種(小・中・高校)等に応じ,それぞれの集団の特性を生かす際に留意すべき内容・方法について追究する。
2.個性豊かな生き方のための基礎・基本を明らかにし,その援助・指導のあり方をまとめる。
そのために, ○ 協力校の実践事例を通して,発達段階や個々の実態に応じて,どの個にも共通する課題(そろえるべき,閉じた目標)と,個々人ごとに異なる課題(違えるべき,開いた目標)とを明確にする。
○ 個が生かされたよい事例及び生かされなかった事例の検討を通して,よりよい援助・指導のあり方を追究する。