研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -031/123page
1 研 究 の 概 要
1.研究の趣旨
本研究は,学習指導の改善の視点から,基礎的・基本的な内容を身につけさせる過程を通して,更にそれを基盤としながら一人一人の個性を生かし,伸ばす学習指導の在り方を,実践的に追究しようとするものである。
平成元年3月に学習指導要領が告示され,その中の「第1章 総則 第1 教育課程編成の一般方針」の1には次のように示されている。
「学校の教育活動を進めるに当たっては,自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成を図るとともに,基礎的・基本的な内容の指導を徹底し,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。」
学習指導要領の総則は,新しい学習指導のあるべき方向性を示す性格を持つものである。その意味で上記の内容は,「基礎的・基本的な内容の指導を徹底し,個性を生かす教育」が改めて新しい学習指導の在り方として位置づけられたものであり,まさに本研究の必要性を物語るものであろう。
2.研究計画
本研究は,昭和62年度から5年計画で実施しており,年次ごとの研究内容は次の通りである。
第1年次(昭和62年度)
・主題に関する文献研究及び実態調査
第2〜4年次(昭和63年度〜平成2年度)
・前年度までの研究の見直し
・研究仮説の設定
・実践研究(教科等における仮説の設定,検証授業及び分析と考察等)
(昭和63年度)小学校国語科,小学校社会科,中学校数学科
(平成元年度)小学校図画工作科,中学校英語科
(平成2年度)小学校算数科,小学校道徳
第5年次(平成3年度)予定
・第4年次までの研究の見直し
・実践研究(教科等における仮説の設定,検証授業及び分析と考察等)
・研究のまとめ
3.研究のための基本的な考え
これまで,教科の実践を通して「基礎・基本の定着と個性の伸長」を目指して研究を続けてきたが,より一層の研究の充実のために,道徳及び特別活動まで研究領域を広げることとした。
各教科,道徳及び特別活動は,それぞれ固有の特質とねらいを持った教育活動であるが,他の領域と相互に関連し補充し合いながら,その領域の目標を達成し,全体として学校教育の目標を達成させるものである。そのため,教科の学習を支え,それらを相互に補充し合う道徳及び特別活動の取り組みは,これまでの研究に加えて,更に研究の幅と深さをもたらすことになろう。
文献による理論研究及びそれに基づく実態調査を踏まえて,「基礎・基本」,「個性」及びそのかかわりについて,各教科,道徳及び特別活動についてそれぞれ次のようにとらえた。
(1) 「基礎・基本」について
各教科においては,基礎・基本を基礎的・基本的な内容としてとらえた。基礎的・基本的な内容は,「学習指導要領における教科の目標・内容」ととらえ,更に,児童生徒の実態に即して取り扱われる「教材の持つ価値」までも含めるものとした。この基礎的・基本的な内容は,すべての児童生徒に共通に身につけさせるべきものであり,それは主体的に生涯学び続けるカとなるように定着させなければならないものである。
そのためには,これを身につけさせる過程において,児童生徒一人一人の見方や考え方,感じ方などの個人差に深くかかわる思考力,判断力,表現力,創造力等の能力を重視することが必要になるものと考えた。
道徳及び特別活動においても,基礎・基本を「学習指導要領における道徳の目標・内容」「学習指導要領における特別活動の目標・内容」ととらえた。小,中学校の段階は,知的にも,心的にも,身体的にも調和のとれた発達を遂げることが