研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -051/123page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

3 小学校道徳における実践研究

1.道徳における研究の仮説

(1) 「基礎的・基本的な内容」,「その子らしさ」とのかかわり

 道徳の時間の指導においては,基礎的・基本的な内容としてあげた道徳の内容を窓口としてそれまでの自分はどうであったかを見つめさせることが中心になる。

 自分を深く見つめるには,多様な見方や考え方に出合い,自分の価値観を比較,吟味,検討することが大切である。その過程を通して,「自分らしさ(その子らしさ)」をとらえ直したり,更に新しい「自分らしさ」を発見し,生かしていくことができるようになると考えた。

 また,授業の中で効果的に自分の価値観を比較,吟味,検討させていくには,ジェクタビリティが深く関わってくると考え,授業の各段階に位置づけて刺激するよう構想した。

(2) 研究の仮説

 道徳の時間の指導において,児童一人一人の持っている「その子らしさ」を把握し,学習内容とのかかわりから道徳的価値に対する見方,考え方をしっかり持たせ,それを基に多面的,多様な考えを吟味,検討できる指導の在り方を工夫すれば,基礎的・基本的な内容に支えられた道徳的実践力が高まるとともに個性を生かしていくことができるであろう。

《仮説について》

○ 一人一人の持つ「その子らしさ」の把握

 児童は,資料に表された事実から問題状況を見つけ出し,それを乗り越えるためのよりよい解決の方向を見い出そうとするとき,「その子らしさ」が発揮される。つまり,場面の状況を把握し,そこに含まれる問題を把握し,判断をして自分なりの対処を意志決済するといった一連の心の動きには各段階で「その子らしさ」が色濃く反映されてくるということである。そのために,児童の生活全般に表れる「その子らしさ」の調査や授業で取り扱う価値に対する意識調査を行い,分析し,「その子らしさ」をとらえて授業の中で生かす構想をたてていく。

○ 多面的,多様な考えを吟味,検討できる指導の在り方の工夫

 深い価値認識は,一方的に与えられたり,教師の方向づけにしたがった思考からは生まれない。自分とは違った見方,考え方のすばらしさやよさが実感として感じられ,納得をもって受け入れられたとき,児童は主体的に自分の価値に対する考えを問い直すことができる。

 そのためには,多面的で多様な見方,考え方の中で自分の価値に対する考えを吟味,検討していく場と過程がぜひとも必要となる。本研究では,次の点に改善と工夫を加えていく。

 ・ 意見の相互交流を可能にする学習形態

 ・ 相互交流の方法

 ・ 意見の相互交流機能を生かした話し合いの組織化

○ 基礎的・基本的な内容に支えられた道徳的実践力の高まり

 実感や納得,本音を大切にすることが,児童一人一人の「その子らしさ(自分らしさ)」を支える大きな要素である。

 しかし,それが自己中心的であったり,底の浅い表面的な考えであったりしたのでは,柔軟で調和のとれた内面の育成につながらない。また,基礎的・基本的内容としてあげた道徳の内容のどれ一つを軽視してもよりよい生き方を求める際の基盤となる道徳性は確立できないであろう。

 豊かな広がりと深さをもった道徳的実践力の育成には,基礎的・基本的な内容としてあげた道徳の内容を視点として自分自身を見つめ,「その子らしさ(自分らしさ)」を自覚させていくことが大切になる。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。