研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -050/123page
自分なりの数理的な処理の仕方を駆使して考える。(思考力)→それを図示したり式に表したりする。(表現力)→相互に考えを交流し合う。(比較,推量)→それぞれの数理的な処理を吟味,検討し,よりよい数理を発見していく。(判断力,創造力) このような過程の中で,各段階の学習が緊密に関連し合い,その中でジェクタビリティ(判断力,思考力,表現力,創造力等の能力)も刺激されたと考える。
5.算数科における研究のまとめ
今回の実践研究においては,把握した児童の「よさ」を各段階ごとに生かし,意識化させ,伸ばす指導の在り方を追究してきた。
このような指導を通して,児童は主体的に学鷲に取り組むようになり,基礎的・基本的な内容の定着が図れた。また,自分の「よさ」に気づき佃ばそうとすることにより,個性の伸長につながてたと考える。
今後,このような実践をする場合には,次のような点に留意することが必要と考える。
1 単元全体を通して課題解決ができる,より効果的な指導計画の工夫をする。
2 児童の創造豊かな活動の場となり,「よさ」が表現でき,認め合える発展学習のありかたを,更に吟味,検討する。
3 自己評価と相互評価を密に関連させ,指導適程の適所に位置づけて,児童一人一人が「よさを意識して学習に取り組めるように配慮する。
【授業者の感想】
福島市立鎌田小学校 教諭 米山 フサイ 教科書を使って児童にいかにわかるように指導するか,いかに教具を工夫して提示するかといった観点で指導してきた私にとって,今回検証授業をして,児童共々大変すばらしい収穫を納めた。 第1次の授業「角の大きさ」では,単元全体を通した「宝のありかをさがそう」という大きな課題で取り組んだ。児童にとって興味・関心のある宝島の地図を提示し,宝のありかを捜す(コースを書き写す過程で角度の学習を展開していく。)方法は,どの児童も「われこそは……」という気持ちで真剣にコースを書くことに取り組み,かなりのインパクトがあった。また,基礎・基本を定着させるためには,豆テストや反復練習などをさせてきた私にとって,今珂の授業のように自分や友達の「よさ」を見つけて刺激してやれば児童の意識に変革がみられ,主体的に学習に取り組むようになり,その過程でおのずと基礎・基本が身についていくものだということを実感した。 発展学習として児童自らが問題作りをし,全員の問題が分厚い一冊の問題集となって手渡された時の喜々とした児童の実務は忘れられない。これからの単元で是非取り入れて行きたい。 第2次の授業「小数」では,複名数表示から学名数表示にする過程などで第1次の授業との関連をもたせ,宝島より発見した魔法の水,剣,金塊など(児童にとってはかなり魅力的であった。)の量を用いるなどして小数の指導を行った。また,好きな友達と班を編成し,お互いに友達の「よさ」を見つけ,わからないところは,教えたり教えられたりして協力学習を進めてきた。授業の終わり5分間で個人カルテに本時の反省を書き,友達には「お手紙カード」を書いて手渡すことなどは,まさに児童の心理をうまくっいた手法であった。プリント学習の場面では「小数村へようこそ!」という袋に入った問題集を使い,自分の力にあったコースを選び問題解きをする方法をとったので,どの児童も意欲的に取り組んだ。 これらの実践を通して,基礎的・基本的な内容の定着が図られ,個を生かし伸ばすのにつながったと思っている。