研究紀要第83号 「基礎・基本の定着と個性の伸長に関する研究 第4年次」 -054/123page
3.道徳における実践の概要
本実践にあたって,授業は,前ページの「道徳の時間の全体構想」を基に構想した。詳細な検証には,次の4主題6時間の授業を充てた。4主題とも「その子らしさ(自分らしさ)」を自覚させ生かし育てていこうとする際の中核となる価値項目と考えたからである。
<1> 主題名 「すれちがい」……1時間扱い
価値 2−(4) 「寛容謙虚」
<2> 主題名 「大冒険]……2時間扱い
価値 1−(6) 「個性の伸長」
<3> 主題名 「見えた答案」……1時間扱い
価値 1−(4) 「明朗誠実」
<4> 主題名 「友だち」……2時間扱い
価値 2−(3) 「信頼友情」
授業の実際を述べていくにあたり,次の2主題について授業の概要と資料を以下に述べる。
(1) 1時間扱いの授業
<1> 主題名 「すれちがい」
<2> 資料
土曜日の下校時,よし子とえり子はピアノのけいこに一緒に行く納束をした。落ち合う時間はえり子が電話で連終することにした。しかし,双方の家の事情で,電話連終がうまくいかなかった。えり子が電話をした時,よし子の家の人はだれも電話口に出なかった。その後,よし子が電話をした時は,えり子は母の用事でスーパーに行っていた。二人は後でピアノの先生宅で顔を合わせたが,よし子は知らんぶりをしていた。 <3> 本時のねらい
相手の立場を十分に考え,広い心で受けいれようとする態度を養う。
<4> 授業の流れ
事前
友だちと「意見のくいちがい」があった時の自分の傾向についてまとめさせる。[視点1]→ 教師は座席表にまとめ児童に配布。 導入 |
「意見のくいちがい」時の学級の傾向につて知らせ,ねらいとする価値への方向づけを図る。 展開前段 |
1 イメージポスター(組み絵の一枚)を提示し,場面の状況を予想させる。 2 予想を基に資料を読ませる。 3 よし子のとった行動を検討させながら,二人の間の問題点を明らかにする。 4 よし子の言動に対する自分の考えを持たせる。[視点2] ○ よし子の言動を認める立場 ○ よし子の言動を認めない立場 5 座席表を基に相手を決め,意見交流をする。 ・ 対話形式 6 よし子とえり子の行動を対比しながら,二人に足りなかったことについて検討し合わせる。[視点3] 展開後段 |
○ 友だちと立場や意見が異なった時,自分 はどうであったかを見つめ直す。 ・ 視点1.2.3を比較して (2) 2時間扱いの授業
<1> 主題名 「大冒険」
<2> 資料
夏休みのある日,トットちゃんはみんなに秘密にして,自分の木に泰明ちゃんを招待した。体の不自由な泰明ちゃんは,小児麻痺で一度も木に登ったことがなかった。トットちゃんは,はしごや脚立を使って登らせようとしたが,なかなかうまくいかなかった。何度も泣きそうになったが,あきらめないで汗びっしょりになりながらがんばった。 そして,ようやく登らせることができた。初めて見る景色に,黍明ちゃんは喜んだ。それから,二人で,楽しい話をした。しかし,泰明ちゃんにとっては最初で最後の木登りになってしまった。 <4> 本時のねらい
自分の心と体を通して自分のよさを発揮し,常に自分の長所を伸ばしていこうとする心情を育てる。