研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -067/123page
1 研究の趣旨
映写機,0HP,テレビ等の教育メディアは,文字情報だけでは指導が難しい場面や直接体験できない場面を画俊情報で提示するなど,学習指導の補助的手段として利用されてきた。しかし,近年はコンピュータの出現により,教育メイデアの利用方法は大きく変わりつつある。コンピュータには,今までの教育メディアにはない数々の機能があるため,その活用方法が注目されている。
学習指導へのコンピュータの活用は小,中,高等学校等の全校種にわたって,学習指導要領に位置づけられた。
それによると,小学校では,コンピュータを無理に利用することなく,児童が自然に触れ,慣れ,親しませる程度を基本として指導することとなっている。中学校では,必要に応じ,コンピュータの効果的な活用を進めるとともに,技術・家庭科の領域にコンピュータを学習する「情報基礎」の領域が新設された。高等学校においては,生徒の個性,能力,進路の分化・多様化を考慮し,学習の道具としてコンピュータを活用するほか,コンピュータに関する学習や情報活用能力の育成についても観れることになっている。また,特殊教育では,コンピュータ等の教育機器を適切に活用することになった。
これは学校教育がもつ本来の目的,目標を基本に据え,児童生徒の発達段階に応じてコンピュータ等を正しく理解し,利用することによって,未来の高度情報社会に生きる児童生徒が個性,能力を十分発揮できることを目指している。したがって,コンピータを活用するに当たっては,学校全体の組織を通して効果的になるよう図っていく必要がある。さらに,文部省からの調査で,本県では次のような点が浮き彫りにされている。
(1) 環境の整備
学校では,コンピュータの台数やソフトウェアの種類・数量が不足している。また,コンピュータの設置場所の検討等,環境の整備が必要である。
(2) 教員の研修
学校ヘコンピュータが導入され,学習指導への活用が目前に迫っている。このため,教育センターや地域において研修を実施しているが,さらに研修の充実を図り,コンピュータを活用できる教員を養成する必要がある。
(3) 学習指導への活用
学習指導要領でも取り上げられている学校教育へのコンピュータの活用はまだ日が浅く,その活用法やソフトウェアの開発は十分とはいえない状況にある。
このように学校教育にコンピュータを活用することに対して,いろいろな課題に直面しているが,児童生徒の学習に対する意識等が多様化している現在,興味・関心をもって自ら進んで学習活動に取り組ませる指導は最も重要なことである。そこで当部では,課題になっている(3)に視点を当て「授業におけるコンピュータの効果的な活用」について研究を進めることにした。
「情報化社会に対応する初等中等教育の在り方に関する調査研究協力者会議」のとりまとめでは,コンピュータ等を活用するねらいとして「児童生徒の理解を助け,思考力を鍛え,創造性を発揮させる。」が示されている。また,臨時教育審議会では「主体的な学習活動」が果たせる体制を確立する必要があると述べている。
これらのことから,本研究では,児童生徒の学習指導におけるコンピュータの活用目的を「主体的な学習活動の支援」に置き,学習活動のどの部分に,どのようにコンピュータの機能を活用すれば効果的かを探ることにした。
第一年次は,県内の学校のコンピュータ等に関する実態調査を実施するとともに,学習指導要領に沿った各教科,科目の指導内本とコンピュータの機能との関連を研究する。そして,次年度は,これらの研究からコンピュータの効果的な活用についての見通しを立て,授業の在り方を実践的に追究するものである。