研究紀要第84号 「授業におけるコンピューターの効果的な活用に関する研究 第1年次」 -089/123page
2.コンピュータ機能の概念規定と機能の分類について
コンピュータの機能に関する分類は,コンピュータそのもののしくみ,システム,ソフトウェア等,取り上げる内容によって多岐にわたっている。本研究では,「主体的学習の支援としての活用」という立場から機能の概念を規定し,7つの機能(P.69表2−1)に分類した。機能内容に関する具体例は各教科・科目ごとに示したが,柔軟に対応できるよう,可能な限り一般化に努めた。今回のコンピュータ機能の活用に関する調査2は,これに基づいて行われた。
3.教科・科目の指導内容とコンピュータ機能との関連表作成について
今回作成された関連表は,コンピュータの機能を十分生かすことにより学習効果をさらに高めようとするもので,各教科における学習指導や学習活動の目標達成を支援することをねらいとしている。これに関する研究は,研究対象教科・科目について,1 コンピュータを活用する指導内容の分析,2 コンピュータの機能を活用する場面の設定,3 関連表の作成,と段階的に行った。特に,関連表の作成においては,最適機能を最適箇所へといった視点からコンピュータ活用の年間学習指導計画への位置づけ等についても検討を加えた。
次年度は,各教科の関連表にさらに改良を加えながら検証授業に活用し,研究をすすめる予定である。
なお,研究の結果,関連表の作成に当たっては,次のような点に留意する必要が認められたので,表4−2に記す。
4.関連表に基づく教材ソフトの整備から
本研究では,ソフトウェアの分類については文部省の「情報化社会に対応する初等中等教育の在り方に関する調査研究協力者会議」を中心に作成された手引書に基づくこととし,今回作成した関連表に基づく学習用ソフトウェアの整備に着手した。次年度は授業の具体的な場面でこれらを活用し効果の度合を検証する。
表4−2 関連表作成のための留意点
教科
学校
関連表作成のための留意点
理科 小 ○ 観察,実験等における問題解決活動の場で知的ツールとして活用できるよう配慮する。
○ 直接経験ができる観察,実験をコンピュータで代替しないよう配慮する。
○ 他の教育メディアで十分効果が得られるところには,コンピュータ活用の場を設定しない。中 ○ 観察,実験が行いにくい場面に模擬実験等を設定する。
○ 観察,実験の支援ツールとして計測等に活用するよう配慮する。
○ 他の教育メディアで十分効果が得られるところには,コンピュータ活用の場を設定しない。高 ○ 観察,実験が行いにくい,または不可能な場面で模擬実験等を行うよう配慮する。
○ 観察,実験の支援ツールとして計測等に活用するよう設定する。
○ 「探究活動」の支援ツールとしてグラフ化,文書化等に活用するよう配慮する。
○ 他の教育メディアで十分効果が得られるところには,コンピュータ活用の場を設定しない。数学 中 ○ 相談学習の場が多くなるよう設定する。
○ 他の教育メディアとの組み合わせを検討する。
○ 概念形成を阻害するコンピュータの活用にならぬよう配慮する。技術 中 ○ 作業学習の目的を阻害しないよう,コンピュータ活用の場を設定する。
○ 習熱度別学習を可能とするコンピュータ活用の場を設定する。
○ コンピュータ使用時間が短時間でも学習効果の上がる活用方法を考慮する。家庭 高 ○ 生活情報のデータベース化を図り,資料として効果的な活用ができるよう配慮する。
○ 実験,実習,調査等のデータ処理,解析,診断の支援としてコンピュータ活用できるよう設定する。
○ 生活設計やデザイン,住居設計等の構想表現の支援ツールとしてコンピュータ活用の場を設定する。商業 高 主に,次の目的が達成されるようなコンピュータ活用の壕を設定する。
○ 興味・関心の高揚
○ 主体的な学習方法の確立,態度の形成
○ 基礎的・基本的な学習内容の定着研究第二年次は第一年次の研究結果を踏まえ,研究協力校において,児童生徒の主体的な学習活動を支援する授業改善のための実践的研究を行う。