研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -107/123page

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今後の指導援助の課題としては

・教師が児童生徒をどのように理解するか

・児童生徒に対して,自己理解をどのように深めさせるか。

ということが上げられる。

 図3から,子どもが自分の長所を「よく知っている」「知っている」ととらえている保護者を合わせると,小学校46%,中学校49%,高等学校46%となっている。この値は,図1の児童生徒の現在とほぼ同様な結果となっている。

 しかし,図1の現在では,児童生徒が自分の長所を「あまり知らない」「知らない」を合わせると,小学生48%,中学生49%,高校生48%であるのに対して,保護者の「あまり知っていない」を見ると,小学校44%,中学校41%,高等学校38%になっており,小・中・高等学校へと進むにつれて子ども理解がむずかしくなるといえよう。

 また,保護者の「分からない」が,10%から15%になっていることからも,親が子どもの実態を把握しきれないことが分かる。

図4【児童生徒】 興味や関心を持っているものがありますか。
図4【児童生徒】 興味や関心を持っているものがありますか。

棒グラフ1 小学生現在棒グラフ2 中学生現在棒グラフ3 高校生現在棒グラフ4 今後

 図4の現在を見ると,興味・関心の対象が「はっきりしている」という児童生徒は29%から33%に過ぎないが,今後では「ぜひ持ちたい」「持ちたい」を合わせると88%になる。

図5【保護者】 あなたのお子さんは,どんなことに興味・関心があるか知っていますか。
図5【保護者】 あなたのお子さんは,どんなことに興味・関心があるか知っていますか。

棒グラフ1 小学校親棒グラフ2 中学校親棒グラフ3 高校親

 図5から,子どもの興味・関心の対象を「よく知っている」「知っている」という保護者は,小学校76%,中学校66%,高等学校56%であり,小・中・高等学校と進むにつれて,興味・関心を把握しきれないでいることが考えられる。これは,年齢が高くなるにつれて,自我の確立とともに,自立指向が高まるようになり,親との関わりが少なくなっていることが原因の一つと考えられる。

 「長所の理解」および「興味・関心の対象の有無」の2つの観点から,共通して言えることは,児童生徒が今後へ向けての強い痛いを持っていることと,親が自分の子どもの姿を正しく理解することの難しさであり,今後の課題の一つと考えられる。 児童生徒が自己理解をより深めるには,教師や保護者や友人などの他者から「自分が正しく理解されている,認められている」という気持ちを持つことが前提とされている。 その意味では,児童生徒が「親からも理解されている,認められている」という気持ちを持つことが大切であり,保護者と教師が相互理解のもとに連携を図り,児童生徒を正しく理解していくことが重要である。

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