研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -116/123page
3 調査のまとめ
開発的な指導援助の基本的な6つの要点について,調査結果をもとに,今後の課題を集約し,指導援助の方向性をまとめた。
調査結果から明確にされたことは,次のようなことである。
(1)健康に関すること
児童生徒の健康維持や健康増進のための指導援助の大切さ,また,発達段階を理解したうえでの子ども理解と対応,さらに,養護教諭との連携による,より効果的な指導援助の重要性が指摘された。
すなわち,健康についての指導援助が,児童生徒が自己実現を図っていく上で,もっとも基礎的なことであると認識できる。健康面への指導援助は,「心身一如」とも言われる通り,精神面への指導援助にも関連することになるので,今後,十分に配慮する必要があると考えられる。
(2)安全に関すること
物理的環境における安全はもちろんのこと,児童生徒が精神的に安心できる学校生宿環境を保障することの大切さが指摘された。それには,学級内の人間関係や児童生徒と教師との人間関係がより良いものであることが,基盤にあると認識された。
すなわち,精神的な安心感や安定感が保障されて初めて,自己を見つめる余裕も生まれてくるものと考えられる。
(3)所属と愛情に関すること
児童生徒が常に,認められ受け入れられていることの重要性が指摘された。そこで,日常の教育活動の中で,温かい学級集団を育成していくことが何よりも基本になるものと考えられる。
すなわち,常に,また積極的に子どもたちのふれ合いを深めることが大切と考えられる。
(4)自己理解に関すること
子どもたちは,自分自身を十分に理解していない状況が分かる。
すなわち,自己理解があって,初めて,自尊感情や向上意欲が高まるものと考えられるので,常に,客観的に自分を見っめさせるような機会を与えることが大切と考えられる。
(5)自尊に関すること
自尊感情に基づいた意識や行動が十分とはいえない状況が伺える。このことから,自分自身への誇りや自信を持っことが,将来への意欲につながることを考えると,自尊感情の基盤となる教師の「認め」「ほめる」かかわりが,より大切になるものと考えられる。
(6)将来への向上に関すること
小学校から一貫した広い意味での「進路指導」の重要性が指摘された。
いろいろな場面と機会において,目標を明確に持てるような指導援助が大切と考えられる。自己実現のためには,児童生徒の意欲づけを図りながら将来への「自己像」の確立を援助することが必要である。
また,共通して心理検査や各種の実態調査の重要性が指摘された。
以上,今後における課題を集約したが,その基盤には,指導援助者の子どもに対する限りない愛情と教育に対する熱意が大切であることはいうまでもない。