研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -118/123page

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5 開発的指導援助の基本的対応

 開発的な指導援助について,すでに明らかにされた問題点と,指導援助の方向を踏まえて,次の12項目を基本的対応として考えた。

 また,具体的な学校での指導の場面については健康・安全・所属と愛情・自己理解・自尊・将来への向上の6つの要点から次頁の一覧表を作成した。

1 12の草本的対応

(1)健康の維持・増進に留意し,基本的な生活習慣を身につけさせる。

・学校生括のあらゆる場面で,児童生徒の健康観察は可能である。児童生徒への気づきを深めるとともに,基本的な生活習慣を確立させる。

(2)生命を尊重し,事故防止に留意させるとともに,他者への思いやりを大切にする心を育てる。

・安全への配慮として,事故防止のみならず,安心できる学習環境を保障する。

(3)互いに認め励まし,協力して活動することによって,達成感・自己存在感を持たせる。

・学級内の親和力を高め,所属感を深める指導は学校行事や特別活動の時間を含め,根気強く実施する。

(4)温かいふれあいのある学級づくりに努める。

・集団のなかでの互いの愛情を深め,良き集団づくりのためのふれあいを進める。

(5)学校生括での規則や責任感を自覚させる。

・所属と親和感の根底に規範的なものに対する自覚が必要である。将来への自立に向けて,自己を律することの大切さを悟らせる。

(6)自分への気づきと理解を図り,自分自身についての洞察を図る。

・自己理解は,6つの要点の根底にある自分の性格や行動,特性について深く見つめさせる。

(7)適切な「認め」によって自己尊重の気持ちを高め,肯定的な「自己像」を確立させる。

・「認め」「ほめ」「励ます」ことにより,自分への信頼と自信と誇りを育てる。

(8)自ら価値観に基づいて,自分を信じ主体的に行動できるようにする。

・普段の生活の中で価値観の確立を図り,自己信頼のもとに積極的な生き方ができるようにする。

(9)自分自身を大切にすると同時に他者をも尊重する心を育てる。

・自分の考えや生き方を大切にすることば,同時に他者の考えや生き方を尊重することであることを理解させる。

(10)自分自身にとっての目的意識を明確にさせ,将来について考えさせる。

・自己成長のために目的志向性を高めるとともに,進路に向けて自己実現を図る。

(11)必要に応じて,調査・検査を実施し,その結果を児童生徒一人ひとりの成長のために役立てる。

・調査・検査を,児童生徒理解に活用するとともに,個々の児童生徒の自己理解に生かす。

(12)家庭との連携に配慮し,児童生徒に対する理解と援助をより適切なものにする。

・学校と家庭が相互信頼のもとに,適切な指導援助ができるようにする。


 これらの基本的対応は,それぞれ具体的な指導援助の場面で,実際に即して生かしていかなければならない。

 また,その指導援助は,児童生徒一人ひとりの個性を十分に配慮したものであることが望まれる。

 次頁の,具体的な場面ごとの指導援助について,さらに実践によって確かめていくことで,開発的な指導援助の基本的対応は,より明確化されるものと考える。


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