研究紀要第85号 「事例を通した教育相談の進め方に関する研究 第1年次」 -120/123page

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6 研究のまとめ

 本研究は,前年度までの「治療的な指導援助」「予防的な指導援助」のあり方についての研究成果をふまえて,「児童生徒一人ひとりのよりよい人格の成長と新しい能力の発見による自己啓発を図ると共に,生活によりよく適応していけるような開発的指導援助のあり方」について探ることとした。

 第1年次の本年度は,次の内容について研究を進めた。

1 開発的な指導援助の基本的なとらえ方を「自己実現に向かって自発的に進むことを可能にする指導援助」ととらえた。

2 具体的に研究を進める上で,アブラハム・マズローの「人間の中に自己実現の欲求が発動してくるには,生理的欲求から始まって,安全の欲求,所属と愛情の欲求,承認の欲求など,基本的な欲求が一つずっ完全に満たされて初めて可能になる」という欲求階層説をよりどころに開発的な指導援助の視点を次の6つの要点にまとめた。

(1)健康

(2)安全

(3)所属と愛情

(4)自己理解

(5)自尊

(6)将来への向上

3 上記の6つの要点について,子どもたちが学校や家庭の中でこれらの欲求がどう満たされているのか,保護者は自分の子どもをどのように理解しているのか,教師の子どもへの開発的なかかわりはどうかについて意識調査を実施した。

4 調査の結果から問題点とその背景を考察して改善の方向まで検討した。改善の方向を集約して開発的な指導援助のための基本的な対応をまとめた。

5 所属と愛情や承認の欲求を満たし,子ども一人ひとりの自己実現が図られるような,支持的受容的な学級づくりを推進するために,研究協力校における学級集団の実態把握に関する調査

・検査をもとに,12項目の基本的な対応項目を選定した上で,それらの項目についてねらいを設定し,学校におけるいろいろな教育活動場面でおこなわれる開発的な指導援助の内容・方法をまとめた。

 平成3年度の研究課題

 本研究は平成4年度までの3か年継続研究となるが,来年度は研究協力校に本年度の研究から明らかになった開発的な指導援助の基本的対応のあり方から,実践に基づいて研究の趣旨に迫る適切な開発的な指導援助の,より効果的な具体的対応を明確にしていくことが課題である。

 この研究成果が,学校における児童生徒の人格形成のための教育相談の一助となることを願っている。

 本研究の推進にあたりご協力をいただいた各学校の先生方に謝意を表するとともに,各校からのご意見・ご助言を期待する次第である。

<研究協力校および研究協力委員>

二本松市立二本松南小学校 (教諭 渡辺浩人)   福島市立蓬莱東小学校  (教諭 本間貞二)

福島市立信陸中学校    (教諭 小柴治紀)   本宮町立本宮第一中学校 (教諭 安斎次弥)

福島県立福島工業高等学校 (教諭 武藤次雄)

<研究プロジェクトメンバー>

阿部 貞夫  朽木 耕作  佐久間益郎  斎藤 洋一  畠腹 桂子  伊勢 英子

赤塚 公生  玉川 邦夫  鈴木喜三郎  遠藤美代子  後藤 ヨネ

<参考文献>

「完全なる人間」  アブラハム・マズロー著 誠信書房

「学校相談心理学」 神保信一,中西信男,富本佳郎,橋口英俊共著 金子書房

「教育評価法総説」 橋本重治者 金子書房

「心理テスト法入門」 伊藤隆二,松原達哉共著 日本文化科学社


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