研究紀要第86号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第2年次」 -007/109page
2 各視点にもとづく実践内容
これから述べる事例は,「個を生かす学 級経営アイディア集」の有効性を検証する ため研究協力校(小・中・高校3校)にお願いし, 実践してもらったものである。
視点1 個の存在を認め,個の存在を大切に する内容・方法を明確にすること
事例1 自己理解,相互理解を深める学年・学級経営
(「個性発見カード」の活用をとおして)
中学校 第2学年
(1)視点とのかかわり
本事例は,視点1を中心にして,学年会で「個」 の把握のための共通理解を図るとともに,生徒に 対しては「個性発見カード」を活用し,自己理解 や相互理解を深めさせたものである。
手だてとして特に,視点1の下記「そこで」を 実践した。
そこで ○現職教育,学年会等で個の把握の仕方を研 修し,今年度は「いつ,どんな方法」で実 施するかを確認する。
○「個性発見カード」を活用して・自己理解 や相互理解を深めさせる。
(2)実践内容
【1】 学年会での話し合い
本校は大規模校であり,1学年9学級を擁し学 年会に所属する職員も13名いる。
そこで,学年会を定期的に開催し,「個」の把握の仕方についての研修を行い,その中で「個」に関する情報を提供・交換し,「個」の理碑を深めるとともに「いつ,どんな方法」で実施するかを検討した。
学年会を学校の日課表の中に位置づけ,時間と場を確保した。
学年会では単なる事務連絡に終始することなく,下記の点に留意して「個」に関する話し合いを行った。
- 生徒の自己認知,自己受容,他者理解,他者 受容の実態を把握する基礎調査をする
- 互いに実践例を出し合い,優れた実践例を学 び合うとともに,悩みについても話せるようにす る
- 個を理解する方法として「個性発見カード」 を活用し,自己理解や相互理解を深めさせる
- 学年会等では,学級名簿を持ち寄り,生徒一 人一人の情報を交換する
- 「個」の努力やよさが見られるときの賞賛や コメントの場を確保する
- 生徒のプラス面の評価をし,賞賛と励ましに 努める
- 認知的側面に偏ることなく,情意的側面の評 価を重視する。そこで,学年全体で学校行事をと おして「個の伸長」を試みる(事例2参照)
【2】 日常の学校生活における自己認知,自己受 容,他者理解,他者受容についての基礎調査
調査項目は15項目であったが,ここでは5項目 について述べる。(2年生97名)
◎あなたは「学級のある個人のよいところ」 を見いだせますか
- 見いだせない 44%,
- 見いだせる 56%
◎見いだせると答えた人にお尋ねします。 「学級のある個人のよいところ」を見いだ したらどうしますか
- その人に伝えない 6%,
- その人に伝える 17%,
- 伝えないが自分もよい点を取り入れ る 55%,
- 伝えるし自分もよい点を取り入 れる 22%
◎あなたは自分の長所が分かりますか
- 分からない 47%,
- 分かる 53%
◎あなたは,友達に認められていると思いま すか
- 思わない 48%,
- 思う 52%