研究紀要第86号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第2年次」 -016/109page

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どのようにかかわっていったのか,F子の日記の 抜粋と共に記す。  

 日記を書かせる上で次のことに配慮した。 

○ 書く日は固定せず,心に感じることがあった 日に書く。

○ 内容は自由記述とする。これは毎日書かなけ ればならないという圧迫感を感じさせないため である。担任は可能な限り感想を書いて,遅く ても翌日には返すように心がけた。  

(2)実践内容 

 F子は,持ち上がりの児童で,学習面での遅れ が目立った。また,休み時間も友人と遊べないな ど全般的に消極的な学校生活を送っていた。家庭 に帰ってからも,同級生とは遊べないで,1年生 の妹やその友人と遊ぶことが多かった。  

【1】意欲を高める(4月8日) 

 担任のA教諭は,2年生に進級したこの機をと らえ,「毎日でなくてよいから心に感じたことが あったら,日記に書きましょう。」と指導した。  

 F子は,日記の第1ページの「2年生になって がんばること」に 

じぶんは1年生のときは,がんばらなかった けれど,2年生になったのだからこくごをい っしょうけんめいがんばってわかるようにな りたい。

 と今年の勉強への決意を強く示している。  

 担任は,「きっとできるようになるよ。あせら ないで一つ一つできるようにしていこうね」と日 記の行末に記し,F子の勉強ができるようになり たいとの願いがかなうよう具体的に方法を示しな がら励ましている。  

【2】F子のよくなった点を紹介する(7月9日)

  くものすにとんぼがかかりしんでいた。か わいそうなのでおはかをっくってうめ,花を かざってやったら,こころのなかでとんぼが いきているようにおもった。

 この日記を翌日の朝の会で全員に読み聞かせ, 「心の中で生きている」という表現の中に「Fち ゃんの温かい気持ちがトンボに通じ,Fちゃんの 心の中にトンボがそっと生きている」と紹介する。

 この紹介は,F子の視点のよさを級友に認識さ せ,F子に対する評価を変えている。

【3】自信を持たせる(9月30日)

 今までのF子は,他人に教えることなどなかっ たが,1年生のN子に鉄棒を教えできるようにした。

 このことを日記で知ったA教諭は,F子に今必 要なことは,学習・生活全般に自信を持たせるこ とであると考えた。

 「Fちゃんは,読み方が上手になったと思った ら鉄棒も教えられるようになったんだ。やっぱり, 本当の2年生になったよ。」と,自信を持たせて いる。

【4】さりげなく「言葉かけ」をする (11月1日)

 F子は,声がきれいであることを認められ,グ ループの中心になって音楽発表会に出場した。そ の喜びを日記に書いた。

 昼休み教室でF子に,楽しそうに歌っている写 真を見せ,「Fちゃんが誰よりも口を大きく開け ていたよ。そして一番よかったのは笑った顔がと ても可愛かったよ」とA教諭はさりげなく言葉を かけた。その言葉にF子は満足した。

(音楽発表会の様子)
(音楽発表会の様子)

【5】成長を認めほめる(11月13日)

 日記で思ったことは,日記がじょうずにな りました。・・・・べんきょうをおぼえてた


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