研究紀要第86号 「個を生かす学年・学級経営に関する研究 第2年次」 -018/109page
- 【2】表現された文章から,児童生徒の言い足り ない部分を補って心情を読み取ること
- 【3】児童生徒を固定観念で見ないこと
- 【4】高等学校の次の例からわかるように,教師 が受容的・共感的な姿勢を持てば,年齢に関係な く教師と児童生徒の心の交流が可能となること
テストの前になると,どうにかしてテストを 避けたいなと思って,みんなで学校を火事に しようかとか,盲腸になろうかとか話し合う けど,それもむなしく,またいつものとおり のテストがきた。・・ 「人間は自分らしく生 きていくのがいちばんだなあ。」とさとりを ひらいても仕様がないけど,現実逃避は結構 楽しい。・・やっぱり人は何か理想を追い続 けてるんだなあと思う。 ・・・
担任のD教諭は,「太字部については一応,そ れが一番だなあと私も思う。しかし,自分らしく というのがこの歳になってもまだわからない。・・・ 一生懸命やってみる。そのことをとおして時間を かけて少しずつ,自分というものが見えてくる」 と自分の人生経験にもとづいた考えを記している。 この言葉に生徒は勇気づけられている。
- 【5】児童生徒のよい面を多く認めてやること
- 【6】4つの視点から複合的に指導していくこと
が重要であること
以上のことから,上述のような配慮事項に留意 した指導,すなわち,視点3にもとづく「加点主 義,長所伸長型の評価法」を中心に他の3視点を 複合的に取り入れた日記指導は,個を生かす学年 ・学級経営をする上で有効であると言えよう。
しかし,これらの指導を効果的に生かせたのは, A教諭の日常的に行われてきた指導の積み重ねが あったからであることを忘れてはならない。
事例2 友達と高まりあう学級経営
(係活動と記録「気づく」をとおして)
小学校 第2学年
(1)視点とのかかわり
本事例は,視点3を中心として「自己選択や自 力解決の場と体験的活動」としての係活動を取り 上げ,個を生かす手だてを実践したものである。
そこで ○一人一人を生かす係活動や一人一役の班活 動を工夫する。 【1】一人一人を生かす係活動にするために,見 直しを行い,後期の計画の段階で次のような配慮 をした。
- 係の決定は,児童の希望を優先する
- 仕事は,先生の仕事のお手伝いを中心とし,仕 事が児童の生活の負担にならないようにする
- 一人一役になるように人数の増減を認める
- 活動の時間は,短くし簡単にできる内容とする
【2】活動の反省記録に「気づく」と名前をつけ, 次の目の帰りの会までに全員の「気づく」に目を 通した。赤ペンによる承認,賞賛の言葉や仕事内 容に対する援助指導も毎日書き込むことにした。
この「気づく」の活用で,
- 児童自身の自己評価
- 伸びを認める教師の評価
- 児童の情意面の評価
ができると考えられる。
【3】係活動を主体的に取り組ませるためには, 他の係の活動にも日を向けさせることが大切であ ると考えた。そこで,朝の会でのミニ発表会やポ スターの作成,お知らせコーナーの設定等係活動 のための教室環境の整備を計画した。
以上の手だてを具体的に実践することで認知面に偏ることなく情意的側面との調和を考えた係活動のあり方が明らかになる。そして,児童自身が自己理解を深め,自己の課題を明確にし,意欲的に自力解決を図るようになれると考えた。
(2)実践内容
【1】係名の話し合い
D教諭は,係名を教師が提示するより,児童と の話し合いにより決定する方が,活動が意欲的に