研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -086/109page
III 研究の実践
1.所属と愛情を高めるための指導援助の実践
所属と愛情については,第1年次研究において次のようなとらえ方をした。
「所属感・自己存在感とは,集団における相互関係の中で受容され,認められることによって得られるものである。家庭や学級が温かく受け入れてくれる環境であることが重要である。」
第1年次で明らかにされた「12の基本的対応」の中で,所属と愛情に関するものとして,次のような 項目をあげることができる。
3 互いに認め励まし,協力して活動することによって,達成感・自己存在感をもたせる。 ・ 学級内の親和力を高め,所属感を深める指導は学校行事や特別活動の時間を含め,根気強く実施する。 4 温かい触れ合いのある学級づくりに努める。 ・ 集団のなかで互いの愛情を深め,良き集団づくりのための触れ合いを進める。 5 学校生活での規則や責任感を自覚させる。 ・ 所属と親和感の根底に規範的なものに対する自覚が必要である。将来への自立に向けて,自己を律することの大切さを悟らせる。 今回の研究においては,3と4に視点をあて実践した。
力を合わせて「長縄跳び」の記録に挑戦
(1)実践学級 小学校6年
男子15名 女子18名 計33名(2)学級の実態
6年生になり,最高学年としての自覚に目覚め集会活動や清掃活動に積極的に取り組むようになってきた。課外活動は多数の児童が特設クラブに入って意欲的に活動しているが,入っていない児童との相互交流が見られない。そのためか互いに認め励まし合い,協力して活動するということが少なかった。
リーダーとして活躍できる児童は数人いる。しかし,率先して学級や小集団をリードしていくような雰囲気がまだ足りないように思われる。
学級全体やグループなどでの話し合いも,一部の児童だけの発言に片寄りがちになったり,自然に男女に分かれてしまったりすることがある。
事例のA子は,数人いる周辺児の一人であり,自分から友達に話し掛けたりすることが少なく,学級の一員として認められることがほとんどなかった児童である。
(3)ねらい
児童が互いに励まし合い,協力し合って活動することの楽しさを味わわせるため,グループで「長縄跳び」の記録に挑戦させることによって,集団への所属意識を高め,互いに認め合う気持ちを深める。
(4)実践した内容・方法
学級を3グループに編成して,「長縄跳び」の回数を競わせる。
[1] 長縄跳びの方法
ア 実施する時間は,学級活動とゆとりの時間の2時限(90分)を活用する。 イ メンバー全員で一緒に何回跳ぶことができるかを競う。 ウ 記録測定は時間内でなら,いつでも,何回でもよいこと。だだし,回数を数えるのは担任が行う。 エ つまずいたら,話し合いをし,回数を伸ばせるように各グループで役割や跳び方を工夫する。 [2] 指導援助のポイント
事前調査の結果から,次のようなポイントを押えることにした。