研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -088/109page
んだよなあ。」とA子を指名する有様である。
そんな中で,女子の目を意識したのか,D男が 「俺がやってやるよ!」と長縄回しをかって出た。 メンバーはただ黙っている。担任はみんなに聞こ えるような大声で,「 偉いぞ! D男君!そう いう仕事が大事なんだね。すばらしいぞ。 」と叫 んだ。
これをきっかけに,B男とD男は,大きな声で 「いち! に!」と言いながら練習を始めた。他 のメンバーは,長縄回しの難しさを知っているた めか,積極的に声に合わせて跳ぶようになる。
他のグループでは,49回を最高に,2回目の記 録への挑戦をすでに終わっていた。
息を合わせて・・・
Yグループは明らかに他のグループから遅れて いる。しばらくすると練習中になんとなくだらだ らした様子が目立ってくる。「始め」の合図さえ 誰も言わない。
担任としては,他のグループからの遅れを意識させるより,自信をつけさせることの方が大事と考え,「 全員で声を出して数えてみようよ。跳び方はもうマスターしてるから,きっとファイトの問題だよ。 」と一緒に輪の中に入る。
ようやくA子を含めて全員の声が出始まると, 徐々に調子を上げ,上手に跳べるようになってく る。縄回しのB男・D男が「○○君!後ろに下 がってきてるよ!もっと前に行けよ!」「ガンバ! ガンバ!」の声。グループは再び意欲を取り戻し てきた。失敗しても,グループで話し合い,並ぶ 順番を変えてみたりする。お互いに「ガンバと!」 という励ましの声が飛び交い,非難の声は消えて いた。
やったぞ 53回!
1回目の記録挑戦は35回。それでも練習中の記 録から見ればベスト。
他のグループは疲れるからと休んでいるときに Yグループでは,いよいよ3回目の記録に挑戦で ある。この時間で挑戦できる最後の1回となりそ うだ。見ていた他のグループからも「ファイト! ガンバ!」の声。縄回しで腕が思うようにならな いと訴えるB男とD男にも,「もっと大きく腕を 回せ!がんばれ!」の声が掛かる。A子も,思 いっきり足を上げて本気になって跳んでいる。
これでまたグループがまとまったと感じられた とき,「・・51!52!53!」「やったあ! 53 回最高記録!」との声が上がった。最高記録で終 了したYグループの男子はB男とD男の所に駆け 寄って握手し合い,女子はA子へ駆け寄り,手を 取り合って喜んでいた。時間終了ということでそ のままYグループは,第1回長縄跳びの優勝グルー プとなったのである。
(5)児童の変容と考察
[1] 学級について
学級の事前・事後調査の調査3に関して上・中・ 下位群別に見ると,図III−1のように,下位群で は大きな意識の変容が認められた。
このことは,長縄跳びが下位群の児童の「所属と愛情」の意識を高めていく上で,特に有効であったと考えられる。
しかし,上位・中位群では意識の高揚が認められず,長縄跳びが「所属と愛情」を満たすにふさわしい種目であったか一考を要する。また,指導援助の過程で,担任のことばかけや,認め励ましが十分でなかったことも考えられる。
しかし,意識調査3の項目の中で,特に以下の項目に大きな伸びが見られた。