研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -090/109page
オ 100mずつバトンタッチをして一人当たり21〜23周走る。 [2] 指導援助のポイント
ア マラソン男子の日本最高記録は,2時間7分35秒である。この記録に少しでも近づくよう「みんなで力を合わせて挑戦しよう」と導入し,学級全体の志気を高めるようにする。 イ 記録に挑戦することは最終日標として掲げ,到達すべき目標を「何よりも完走することが大切であること」におく。 ウ 上記を達成するためには,走り込みを十分行って全員が体調を整えておくこと,学級全体が励まし合い,助け合うこと,などを中心に助言する。 エ リレーマラソンの実施中,児童の自主的な行動を大切にするが,トラブルが生じたり覇気がなくなったりした時は,担任が率先して行動し,励ます。 オ 走りの得意な児童には自慢したり他の児童を非難したりしないこと,体調のよくない人をカバーしながら実施するので,順番通りいかなくても心配しないこと,事前の健康観察を十分に行うなどに留意する。 [3] 実践の経過
リレーマラソンをやろう
個々の児童は,まじめで意欲もあり特に問題はないが,学級全員が一つにまとまっての活動には消極的な面も感じられた。そこで,1学期から一つの目標に全員が向かい,成し遂げた後の満足感や喜びを味わわせるように配慮してきた。
例えば,担任の子供のころの遊びや生活の中から,所属感や満足感を味わった体験を聞かせたり他校の実践例についての新聞記事を読み聞かせたりして意欲を高めるようにした。
2学期になると,学級内の話し合いから「リレーマラソンをやろう」ということになった。しかし,G子は「やりたくない」「おもしろくない」という消極的な態度を示したので,放課後,面接を行い「みんなでやればできるよ」「だいじょうぶ,がんばってみよう」と励ました。G子は,まだ消極的な態度ではあったが参加することになった。
卒業を前に,みんなで参加しよう,みんなで楽しもうということから「リレーマラソン」の計画は着々と進行した。
いよいよ開始・ヨーイドン
天候や諸行事などのため何回も延期になり待ち望んでいたリレーマラソンだけに,児童にとっては早くやってみたいという期待や楽しみのほうが大きかった。
応援している者も走っている者もいきいきして明るい顔であった。ロングランのため業間にも走ったが,予期しないハプニングも起こり,これが児童の意欲を一層盛り上げる大きい力となった。
それは,「わあーいいなあ,僕らもやりたいなあ」「まぜてまぜて!」と言って他の学級の友達が飛び入り参加したり,「おう,がんばれよ走れ走れ」と応援していた先生方3名が,「私も走っていいかな」と走ってくれたりしたことである。このことに刺激されてか,児童の顔は紅潮し,バトンはめまぐるしく手から手へ渡った。
『完走』がねらいとはいうものの,やはり,日本の男子マラソン最高記録2時間7分35秒に挑戦しようという期待をもっている児童もいる。
男子の中には,勝つことにこだわり「負けるな女子を追い越せ」と本気でかけ声をとばしていた児童も2〜3名見られたが,それも初めのほうだけだった。
「がんばれ」 「がんばるね」 走者も応援者も『完走』というひとつのねらいに向かってそれぞれ沸き上がっている。
やったぞ!2時間13分19秒
男子のアンカー到着。タイム2時間13分19秒。その後10分間は遅れた女子の走者だけとなったがアンカーの番になると,男子も女子も一緒に走り出し,ワーワ一言いながらみんなでゴールした。タイムは2時間23分13秒。一瞬シーンとなりそれぞれの成し遂げた感動が伝わってくるように感じた。