研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -093/109page

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2.自己理解を深めるための指導援助の実践

 「健康」「安全」「所属と愛情」の内容がある程度満たされている児童生徒は,自分の性格や能力などについて自己理解を深めることができるようになる。このような状態が「自己理解している」ということである。また,自己理解の前提として,「周囲から認められている」という意識を持つことも重要である。

 第一年次の研究で明らかにされた「12の基本対応」の中で,「自己理解」に関するものとして,次 の項目をあげることができる。

5 学校生活での規則や責任感を自覚させる。
所属と親和感の根底に規範的なものに対する自覚が必要である。将来への自立に向けて,自己を律することの大切さを悟らせる。
6 自分への気づきと理解を図り,自分自身についての洞察を図る。
自分の性格や行動,特性について深く見つめさせる。
11 必要に応じて,調査・検査を実施し,その結果を児童生徒一人一人の成長のために役立てる。
調査・検査を,児童生徒理解に活用するとともに,個々の児童生徒の自己理解に生かす。

 今回の研究においては,6及び11に視点をあて実践した。


自分を知ろう

(1)実践学級 中学校1年
          男子18名 女子18名 計36名

(2)学級の実態

 3つの小学校の出身者で構成される新入生は新たな仲間と中学時代を送り始めた。だが,1学期半ばごろから自分の正確や行動について悩む生徒が見られるようになってきた。このような悩みは小学校時代から「君は○○○だ」と言われ続けてきたことや,日ごろからの「自分自身への思い込み」など自分自身を否定的に捉えている傾向にあると考えられる。

 そこで・生徒一人一人の悩みの様子をより客観的に把握するために「自己理解」に関する事前調査を6月に実施した。その結果,自分のよさを知らない,自分の考えを積極的に言えない,いやなことはいつまでも気にすることなどで悩んでいる生徒が意外に多いことが分かった。さらに,自己理解の深まりを上・中・下位の三つの群に分けてその特徴を分析すると,上位群では,自分の性格についてはよく理解しているようであるが,自分の長所などをはっきりと理解しているわけではない。中位群では静かで優しい性格の生徒が多い。それはそのまま引っ込み思案でもあるため,学習内容についての理解はできているが,それを自分の考えとして表現できる生徒は少ない。下位群では,学級集団にあまりとけ込めず,いつも二人ぐらいの友人と一緒にいる生徒が少なからず見受けられる。

(3)ねらい

[1] 全体的なねらい

 「今の私」についての作文や自己理解に関する諸調査の結果を活用して,生徒自身が自己像を捉え直し,自分の性格や行動,特性についてより深く見つめることの大切さに気づくことによって,自己理解をいっそう深めることができるようにする。特に,自分の性格のよいところや能力,社会的地位などを知り,個性を生かすことができるよう指導援助する。

[2] 各群に対する主なねらい

上位群の生徒には,自分の特性を偏りなく認識し,将来への自立に向けて自己を律することができるようにする。
中位群の生徒には,多面的に自己理解をすることの大切さに気づかせる。
下位群の生徒には,自己理解の仕方を身に付けさせる。

(4)実践の内容・方法


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