研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -094/109page
以下の文中のa,b,…は[1]の記号である。
- a,b 「自己理解」の基礎資料を得るため,放課後の時間を用いて実施する。
- c 自己像を捉え直させるために,学級活動の時間に,自分の性格特性について記述させる。
- d 「自己理解」や他の要点の総得点を用いて生徒の事前の様子を10段階に評定し,それをレーダーチャートに表しながら,生徒一人一人のそれぞれの要点の意識の程度を把握する。
- e,f,g 自己理解を深めるため,朝・昼・放課後の時間を利用し,一人当たり10分〜15分程度の面談場面を設ける。
- h 生徒一人一人が自己理解を新たにした後に今回試みる指導援助を一人一人に振り返らせる。
- i 今回の「自己理解」に関する開発的な指導援助の効果をみるために実施する。
[2] 指導援助のポイント
ア 上位群に対して
生徒自身が作文に記述する自己のよさを教師が受容・支持し,諸調査の結果をも加味して,生徒自身が改善しなければならない面があることに気づかせる。
イ 中位群に対して
生徒が自分の長所や短所を短絡的に把握している傾向にあると思われるので,「自分に対するイメージ通りの生き方をするようになるから,自分の可能性を見つけるためにもいろいろな面から自身を見直してみよう。」と,機会を逃さずに助言を繰り返す。
ウ 下位群に対して
生徒が記述した作文を本人と教師の二人で一緒に読み合うことにより,生徒自身の特徴に触れていると考えられる箇所を探し合う。また,具体例をあげて,自分以外の人間の眼や心を通して自分の姿を見ることができることについても理解させる。
[3] 実践の経過
ア 学級全体
aとbを第1学期中間(6月)に実施した。Cを実施する際には,「自分をよりよく知るためにはどうしたらよいか」という観点から,自分のよいところやもっと高めたいところ,改めたいところを中心に書くよう指導した。dの段階で,自己理解の深まりの程度に応じて,生徒一人一人に対する指導援助の具体策を考えた。そして,それを具現化する際に,面談場面(e,f,g)のみならず,日常の生活の中で機会を捉えながら適宜に指導援助することに努めた。
面談場面では次の点に留意した。
・例えば「落ち着きがない」というマイナスの記述について『君は「いろいろなことに好奇心をもっている」と自分を見ることもできるね。』などと自分を肯定的に見直すことができることを,生徒一人一人の日ごろの様子から考察できる限りにおいてアドバイスをした。
・生徒自身の特徴を捉えられるように話合いをした。
・エゴグラムの結果を生かし,生徒が日ごろ意識になかった自分の自我状態について解説を加え,