研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -097/109page

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3.自尊感情を高めるための指導援助の実践

 第1年次研究においては,「自尊」について次のようにとらえた。

「自尊とは,自己理解の深まりと自己受容の上に立って,自分への誇りと自信を持つこと」である。また,「自尊感情は,他者によって認められ,賞賛されることによって育まれるものであり,それは,自分自身に誇りや自信を持ち,自分自身を大切にするとともに他者をも尊重すること」である。

 第1年次で明らかにされた「12の基本的対応」の中で,自尊に関するものとしては,次のような項 目をあげることができる。

7 適切な「認め」によって自己尊重の気持ちを高め,肯定的な「自己像」を確立させる。
「認め」「ほめ」「励ます」ことにより,自分への信頼と自信と誇りを育てる。
8 自らの価値観に基づいて,自分を信じ主体的に行動できるようにする。
普段の生活の中で価値観の確立を図り,自己信頼のもとに積極的な生き方ができるようにする。
9 自分自身を大切にすると同時に他者をも尊重する心を育てる。
自分の考えや生き方を大切にすることは,同時に他者の考えや生き方を尊重することであることを理解させる。
11 必要に応じて調査や検査を実施し,その結果を児童生徒一人一人の成長のために役立てる。
調査や検査を児童生徒理解に活用するとともに,個々の児童生徒の自己理解に生かす。

 今回の研究においては,否定的な自己像を持つ生徒の自己理解を深めながら,特に7および9に視点 をあてて実践した。


私にもあなたにも「良い」ところがあるはずだ

(1)実践学級 中学校2年
        男子22名 女子18名 計40名

(2)学級の実態

 2年生になって学級編成替えがあった。授業の 雰囲気は静かであり,教科担任などからも特に問 題を指摘されることはない。他を排斥したりする 傾向は見られず,まとまりを感じる学級である。

 しかし,個々の生徒を見ると,ちょっとしたことで自分に自信をなくすなど,耐性に欠ける生徒や,なげやりな態度を示す生徒,相手の気持ちを考えない言動をとる生徒などが見られる。

 また,事前調査5「自尊」の結果からは,「よ さ」に対する気づきの項目や「自分には伸びる可 能性がある」などの自分への自信に結びつく項目 などは,自尊の全項目に対する学級平均を下まわっ ており,自己に対して否定的なイメージを持って いる生徒が多いことがわかる。

(3)ねらい

 学習における所属間や自己理解に関する指導援助を強化しながら,一人一人に自分自身や友人について見つめさせ,よさに気づかせるとともに,生徒一人一人を認め励ましながら誇りや自信を持たせ,肯定的な自己像を確立する。

(4)実践の内容・方法

[1] 指導援助の流れ
指導援助の流れ


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