研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -098/109page
[2] 指導援助のポイント
a 級友のよさを見つめるための機会として,ア ンケートを実施する。アンケートは生徒の実態 を考慮して,日常の生活行動に見られる「よさ」 を項目として自作した。(表III−1参照) b 効果的な指導援助を行うために,生徒一人一 人の資料を精選し,カードにまとめて生徒理解 に活用する。 c 一人一人のよさを認めるという基本的な姿勢 で生徒一人一人と教育相談を実施する。 [3] 実践の経過
実践した指導援助の具体的な内容・方法については,「指導援助の流れ」にそって以下に紹介する。
a 級友のよさの発見アンケートの実施
表III-1 質問用紙「級友のよさを見つけよう」
あなたが選んだ友人の良い点とは
級友の「よさ」を見つけよう!
2年生になって半年が過ぎました。初めはまったく話をしなか った人たちとも、今までのいろいろな活動や学級生活を通して親 しくできるようになったと思います。人間は良い点もあれば悪い 点もあり完全な人間といえる人はいません。しかし,相手の欠点 を指摘したり、悪い点だけを見ていたのでは人間関係はくずれる だけです。お互いが安心して生活できる学級、よりまとまった学 級こするため、お互いが憤れてきた今、友達のよい点を改めて見 つめてみましょう。以下の項目を読んで、よく当てはまるときは ◎、まあまあ当てはまるときは○を、何人でもいいですから書き 入れてくだきい。自分の欄には一線を引いてください。項目の空 欄には自分で何か好きな項日を作って選んでみましょう。
番号 氏名
項目 朝の登校が早い人 掃除をいつもまじめ にやっている人 誰にでもやさし
く している人言葉づかいがいつも ていねいな人 決まりをいつも守ろ う
としている人どの教科の授業でも ま
じめな人この人がいると明る い雰囲気になる人 うわさ話や陰口を言 わない人 いつも落ち着いて 行動できる人 係の仕事などに責任 をもって取り組む人 1 2 ア アンケート作成上の留意事項
表III−1のように,設問作成に当たっては,生 徒の抵抗感を少しでもなくすために,わかりやす い表現になるように心がけた。
イ アンケートの意義
- 級友一人一人の「よさ」について見つめ考えさせることができる。
- 結果を集計することによって,個々の生徒の学級からの「認め」を量的に把握できる。
ウ 実施方法及び処理
学級活動の1時限を使用して実施する。
実施を前にして,「学級の一人一人には必ずよいところがあるはずで,それを発見するために真剣に考えてみよう」という説明を加えた。
実施後の集計では,各項目ごとに◎を2点,○ を1点とし,結果は表III−2のように一覧表にま とめた。
表III-2 よさのアンケート結果集計表
番号 氏 名 性 計 清掃態度 登校時刻 言葉遣い 明る 1 男 111 9 13 11 2 男 34 4 1 6 3 男 101 14 9 11 4 男 45 5 2 3 5 男 65 1 1 9 エ アンケートの結果と活用
一覧表に表れた結果は,予想とは異なり,以下の通りであった。
・ 全員に,学級からの認めがあったこと。
総合での認めは,最低で21点,最高で123点に達した。(10項目40名中)・ 上・中位群より下位群の生徒の方が認めの量が多いが,それに気づいていないこと。 アンケートの結果は,教育相談など,個別の指 導援助の資料として活用した。また,学級への全 体指導の一環として,学級活動の時間に担任の感 想を含めて,結果の全体傾向を伝えた。「私たち の学級には,多くのよさの認めが存在し,しかも, 全員がその認めを受けているという,すばらしい 学級である。」という内容は,生徒たちには大き な驚きと喜びを与えた。
「もっと学級を明るくし,お互いのよさを認め合う雰囲気を強めるために,担任が見た一人一人のよさを,個別に教育相談によって伝えたい。そして,自分自身や級友のよさについていっしょに考えよう。」という教育相談の実施を予告した