研究紀要第89号 「事例に通した教育相談の進め方に関する研究 開発的な指導援助のあり方 第2年次」 -099/109page
b 個人カードと生徒理解
事前調査やよさのアンケート結果などを整理し,効果的に指導援助を行うための個々に対する指導方針を検討した。
ア 個人カード作成の意義
性格行動面や特別活動など,既存の目的別個人資料を,「開発的な指導援助」のための資料に整理し,新たな資料収集により,その補充に努めた。
記入項目は固定したが,内容は自由にいづでも追記できるようにしたり,また,個人のカードの作成過程では,担任が,常に多面的・客観的に生徒を見るという基本的な姿勢を維持することができるという効果も確認することができた。
イ 個人カードの記入例
表III−3は,事前調査で下位群に属していたR 子の個人カードである。アンケート実施直後に記 入したものであるが,概要が分かる程度に内容を 抜粋してある。
また,事後調査の結果は,事例を紹介するにあたって,指導後に書き入れたものである。
C 個別教育相談の実施
学級の全員に対して,個に応じた意図的な言葉かけとともに,個別の教育相談を実施した。
R子に対しても,「グループ学習でのポイント を押えた発言,○○先生が感心してたよ。」「持っ てきてくれた鉢花のおかげで理科室が明るくなっ たよ,ありがとう。」などの言葉を掛けた。
10月上旬,R子の教育相談が行われた。R子 は,緊張した面持ちで理科準備室に入ってきた。 「アンケート結果すごいね。みんなからの認めは 学級でも多い方だよ。本当にすごいね。」 「えっ!本当ですか?」 R子は,今までの自 分は,みんなから嫌われていると思っていたこと や,暗い性格で悩んでいたことなどを話しながら も,明るい表情であった。「卒業したら,○○女 子高に入学したいなあ。」 R子は,初めて進路 について話してくれた。 「すごいね。今からちゃんと自分の進路希望を持 っているんだね。すばらしいことだよ。」
R子の自信のない言動には,できるだけ肯定的 な解釈を返すように努めた。
表III-3 個人カード
※実際のカードは余白が多く自由に記入できるものであるが,抜粋して紹介した。事後調査結果は,後で追記した。